外国人労働者を採用したが、日本語能力が必要な職種であるにもかかわらず、全く会話をすることができない場合、解雇することはできるのでしょうか?
日本語能力があることを前提とした採用である場合には、解雇が有効となる可能性もありますが、解雇回避措置ができる場合には、無効となる可能性があります。
外国人労働者の日本語能力と解雇
日本語能力を期待して雇った労働者の日本語能力が不足していた等の理由で、行われた解雇の有効性が争われた事件として、ヒロセ電機事件(東京地判平14・10・22)が挙げられます。
日本語能力を必要とする即戦力の人材として、中途採用した場合には、想定されていた日本語能力よりも著しく低く、改善の見込みもない場合には、解雇は有効とされる場合があります。
他方で、新卒採用の場合には、日本語教育を施したり、日本語を必要としない部署への配置転換をしたりといった解雇回避措置が考えられ、それらを行わずに解雇が有効とされる可能性はより低くなると考えられます。
ヒロセ電機事件(東京地判平14・10・22)
会社は、当該労働者の海外勤務歴に着目し、業務上必要な日英の語学力、品質管理能力を備えた即戦力となる人材と判断して、品質管理部海外顧客担当で、主事1級の待遇で中途採用しましたが、期待していた能力が不足し、業務命令にも従わず、職場規律違反を繰り返すなどの問題があったため、当該労働者を解雇したところ、当該労働者が、解雇が解雇権濫用により無効であるとして、労働契約上の地位確認を求めて争ったという事件です。
本判決は、中途採用の事案は、長期雇用を前提とする新卒採用の場合とは異なり、会社が初めから必要な教育を施すとか、適正がない場合に、他の部署に配転させるものではないから、労働者が雇用時に予定されていた能力を全く発揮できず、これを改善しようとしない場合には、解雇せざるを得ないと判断しました。
そのうえで、当該労働者の日本語能力が、履歴書の記載などから想定されていたよりも極めて低いなどと認定したうえで、解雇事由に該当すると認めた上で、解雇権濫用には該当せず、解雇は有効であるとしました。