期間の定めのない雇用契約を締結している外国人労働者の契約を終了させたいと場合、退職勧奨を行ったものの、外国人労働者から退職の意思表示がないが、解雇を検討する時は、どのような点に注意すべきでしょうか?
外国人労働者も日本人労働者に対する解雇と同様、行おうとしている解雇がどの類型に当たり、必要な手続きを理解した上で、行おうとしている解雇が法的に有効となるのかを事前に慎重に検討する必要があります。
解雇の類型
解雇には、大きく分けて懲戒解雇と普通解雇があります。
懲戒解雇とは
懲戒解雇とは、労働者が極めて悪質な規律違反や非行を行ったときに、懲戒処分として行うための解雇を言います。
普通解雇とは
普通解雇とは、懲戒解雇以外の解雇のことを言います。解雇理由に従い、以下の4つに分類することができます。
①労働者による労務の提供が不能または不完全な場合(傷病・能力不足・適格性欠如等)
②労働者による職場規律(企業秩序)違反の場合
③使用者の経営上の必要性による解雇の場合(会社解散や、経営悪化により人員整理を行うための整理解雇等)
④ユニオン・ショップ協定に基づく解雇の場合
ちなみに、諭旨(ゆし)解雇という言葉もありますが、懲戒処分の一つとして退職金等を支給した上で解雇するケースと、従業員に対して非行を諭した上で、辞表を提出させるケースがあります。
前者は懲戒解雇に該当し、後者は解雇ではなく退職勧奨に該当します。
解雇共通のルール
各解雇類型について、注意すべき点がそれぞれありますが、いずれの解雇であっても、守らなければならない共通のルールがあります。
まず、①解雇事由を予め労働条件通知書や労働契約書、就業規則等で明示しておいた上で(労基法15条1項、同法施行規則5条1項4号)、当該解雇事由が存在することが必要です。
次に、②当該解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」(労契法16条)でないことが必要です。
さらに、③原則として、解雇の日から30日前の予告か、解雇予告手当の支払いが必要となります(労基法20条1項)。
加えて、④当該解雇が法律上禁止されていないことが必要となります。
外国人労働者の場合に特に注意すべきルール
解雇を含む一般的なルールとして、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」とされています(均等待遇の原則、労基法3条)。
「国籍」には「人種」を含み、「信条」には宗教的信条、政治的信条、その他の諸々の思想が含まれます。
外国人労働者は、「国籍」のほかに「人種」や「信条」等が一般的な日本人労働者とは異なることが多く、解雇事由がこれらを理由とするものである場合には、当該解雇が無効となるおそれがあるため、特に注意が必要となります。
解雇無効の場合の効果
もし裁判等で解雇の効力が争われ、解雇が無効と判断された場合には、労働者を職場復帰させたうえで、解雇から職場復帰するまでの間の賃金をすべて支払わなければならなくなる可能性があります。
したがって、解雇を通知するには慎重な検討が必要となります。