外国人労働者に対して退職勧奨をしたところ、今月いっぱいで辞めたいと言ってきたため、その旨の退職合意書を作成したが、数日後、外国人労働者がやっぱり辞めないと言い出した場合、退職の撤回を拒み、そのまま退職とすることはできるのでしょうか?

退職合意書を作成した後、外国人労働者がやっぱり辞めないと言い出した場合、退職の撤回を拒み、そのまま退職とすることはできます。

辞職と合意解約の違い

「退職」には、労働者からの一方的解約としての「辞職」と、使用者と労働者の合意としての「合意解約」があります。

労働者による退職の意思表示にも、「辞職の意思表示」の場合と、「合意解約の申込みの意思表示」の場合とがあります。

「辞職の意思表示」の場合

「辞職の意思表示」である場合には、使用者にその意思が到達すると同時に、解約告知としての効力が生じ、撤回することはできません。

「合意解約の申込みの意思表示」の場合

一方、「合意解約の申込みの意思表示」である場合には、使用者が承諾の意思表示を行うまでは、撤回することができます。

撤回を防ぐため、「退職願」を提出させたうえで、「退職願受理通知書」を出し、退職合意を成立させる方法があります。

「退職願」の例

○年○月○日

○○株式会社
代表取締役 ○○ ○○ 様

退職願

○○ ○○ 印

私はこの度、下記の通り、貴社を退職いたしたく、お願い申し上げます。

1. 退職年月日 ○年○月○日
2. 退職理由 一身上の都合のため。

以上

「退職願受理通知書」の例

○年○月○日

○○ ○○殿

退職願受理通知書

 

○○株式会社
代表取締役 ○○ ○○ 印

 

当社は、貴殿からの○年○月○日付(退職日同日)退職願を同日受理しましたので、その旨を念のため通知します。
なお、退職にあたり、下記のものを同月○日までに着払いで構いませんので、当社(〒○○○-○○○○東京都○○○○○○○-○-○ TEL:03-○○○○-○○○○(代表))宛にご返還願います。
また、健康保険を任意継続する場合、○○健康保険組合(TEL:03-○○○○-○○○○)に直接ご連絡下さい。

1.身分証明書
2.健康保険証
3.・・・・・・

「退職合意書」の例

合意書

株式会社○○○○(以下、「甲」という。)と○○○○(以下、「乙」という。)とは、甲乙間の雇用契約(以下、「本件」という。)に関して、以下のとおり合意(以下、「本合意書」という。)した。

1 甲及び乙とは、○年○月○日付で甲乙間の雇用契約を解約し、乙が甲を自己都合により退職することを確認する。

2 甲は、乙に対して、本件の解決金として金○○万円の支払義務があることを認める。

3 甲は、乙に対して、前項の金員を○年○月○日限り、乙の給与振込口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。

4 甲及び乙は、本件について円満に解決したことを相互に確認し、乙の退職日の前後を問わず相手方の不利益となるような言動を行わないことを相互に約束する。

5 甲及び乙は、本合意書の内容及び本合意書締結の経緯について、厳格に秘密として保持し、その理由の如何を問わず、その相手方の如何にかかわらず一切開示又は漏えいしないことを相互に約束する。

6 甲及び乙は、甲と乙との間には、本合意書に定めるもののほかに、何らの債権債務がないことを相互に確認する。
以上の合意に達したので、本書2通を作成し、甲乙各1通を所持する。

年 月 日

(甲)
株式会社○○○○
代表取締役 ○○○○ 印

(乙)
○○ ○○ 印

辞職か合意解約かの判断

上記のケースでは、「今月いっぱいで辞めたい」としか言っておらず、「辞職」の意思表示か「合意解約」の申入れかは明確ではありません。

しかし、「退職合意書」を作成することにより、少なくとも作成時点で、労働者による「合意解約の申込みの意思表示」と使用者による承諾の意思表示が行われ、「合意解約」が成立したと言えます。

したがって、上記のケースでは、撤回をすることは認められず、そのまま退職させることができます。
やはり、退職の意思表示は、書面に残しておくことが重要と言えます。