外国人の採用面接において、聞いてはいけないことはあるのでしょうか?人種、出身地、宗教、結婚の予定、病歴、LGBTに関する事項などプライベートな部分を聞いてもよいのでしょうか?

外国人の採用面接において、業務に必要な適性・能力に関係のない事項を聞くことについては慎重になるべきです。

法律による制限等

職安法の規定

職安法5条の4第1項では、「労働者の個人情報を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。」として、その業務の目的の達成に必要な範囲内のみの個人情報収集を求めています。

また、特別な職業上の必要性が存在すること、その他業務の目的の達成に不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合を除いて、以下のことについては、収集してはならないとされています。

①人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となる恐れのある事項

②思想および信条

③労働組合への加入状況

(「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示、労働者の募集を行う者等の責務、労働者供給事業者の責務等に関して適切に対処するための指針(最終改正平成31年厚生労働省告示第122号)」第四の一)

雇用機会均等法の規定

さらに、雇用機会均等法5条では、「事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別に関わりなく均等な機会を与えなければならない。」と規定され、面接で女性のみに対して、結婚の予定の有無、子どもが生まれた場合の継続就労の希望の有無等の一定の事項について質問することは禁止されています。
(「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針(平成18年厚生労働省告示第614号:最終改正平成27年厚生労働省告示458号」第2の2の(2))

「公正な採用選考をめざして」パンフレット(厚生労働省)

厚生労働省は、採用選考について、応募者の基本的人権を尊重することおよび応募者の適性・能力のみを基準として行うことが基本的な考え方であるとして、採用選考時に配慮すべき事項(職業差別につながる恐れがある事項)を14事項列挙しています。

厚生労働省の考え方を踏まえれば、これらの事項について、質問をするのは避けるべきでしょう。

本人に責任のない事項の把握

①「本籍・出生地」に関すること

②「家族」に関すること(職業・続柄・健康・病歴・地位・学歴・収入・資産など)

③「住宅状況」に関すること(間取り・部屋数・住宅の種類・近隣の施設など)

④「生活環境・家庭環境など」に関すること

本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握

⑤「宗教」に関すること

⑥「支持政党」に関すること

⑦「人生観・生活信条など」に関すること

⑧「尊敬する人物」に関すること

⑨「思想」に関すること

⑩「労働組合(加入状況や活動歴など)」、「学生運動などの社会運動」に関すること

⑪「購読新聞・雑誌・愛読書など」に関すること

採用選考の方法

⑫「身元調査など」の実施

⑬「全国高等学校統一応募用紙・JIS規格の履歴書(様式例)に基づかない事項を含んだ応募書類(社用紙)」の使用

⑭「合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断」の実施

既往歴について

既往歴については、適正と能力を判断する上で合理的かつ客観的に必要な範囲かどうかを検討した上で、質問をするべきです。

たとえば、「公正な選考採用をめざして」パンフレットには、運転配送業務において、安全運転に支障をきたすような失神等の発作の有無を確認することは、合理的・客観的な必要性があると例示されています。

LGBT

「公正な選考採用をめざして」パンフレットによれば、LGBTという理由で、面接を打ち切ったり、嫌悪感を示したりするのではなく、LGBTを理解して、応募者の基本的人権を尊重することが重要であるとされています。

調査・採用の自由との関係

企業には、調査・採用の自由(三菱樹脂事件・最大判昭48・12・12)がありますが、前述の通り、法令や行政指導等に注意をする必要があります。

もっとも、労働者を一度採用すると、簡単には解雇はできないことを考えれば(労契法16条等)、外国人労働者の募集・採用においても、丁寧かつ慎重にその当否を判断するべきです。

たとえば、特定の宗教・思想において利用食用が禁止されている等を扱う業務、特定の曜日・時間等に出勤が必須な業務、勤務時間中に礼拝等による中抜けが不可能である業務などの場合には、宗教や思想について、直接質問するのではなく、業務の内容や特性を丁寧に説明し、業務遂行が可能かどうかという範囲において、質問をするなどの工夫が必要になるでしょう。

その前提として、外国の文化・宗教・慣習等を調査しておくことが重要になります。