労働災害とは

「労働災害」とは、仕事が起因となる「業務災害」、通勤が起因となる「通勤災害」の2 種類があり、これらの事由で従業員が負傷、疾病、障害または死亡した場合、労働災害と認定され、労災保険で従業員の医療費や得られるはずの賃金などが補償されます。

「労働災害」として認められない場合、健康保険が適用されますが、医療費の3 割や生活費は従業員の負担となります。

また、「労働災害」として認定された場合、従業員の負傷等の補償に労災保険が適用されますが、対人・対物賠償責任に対して労災保険による補償は適用されないことに留意が必要です。

 

労働災害とは

 

通勤災害とは

「通勤災害」とは、通勤によって従業員が被った傷病等をいいます。

この場合の「通勤」とは、就業に関し、
㋐住居と就業の場所との間の往復
㋑就業の場所から他の就業の場所への移動
㋒単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動

※㋐~㋒までの移動を、合理的な経路および方法で行うことをいい、業務の性質を有するものを除くとされています。

※移動の経路を逸脱し、または中断した場合には、逸脱または中断の間およびその後の移動は「通勤」とはなりません。ただし、例外的に認められた行為で逸脱または中断した場合には、その後の移動は「通勤」となります。

通勤災害と認められるためには、その前提として、㋐~㋒までの移動が労災保険法における通勤の要件を満たしている必要があります。

 

通勤災害で認定されるケース・認定されないケース

労働災害のうち、「通勤災害」として認定される要件は以下の通りです。

通勤中の事故でも、「労働災害として認定されないケース」もあるため、事業者はこういったケースについて従業員への周知と従業員は自身のケガや対人・対物への損害賠償を補償する保険への加入が重要です。

 

 通勤災害で認定されるケース・認定されないケース

 

※通勤災害では、「移動の経路を逸脱または中断した場合」、「逸脱または中断の間およびその後の移動」は、「通勤」とは認められません。

 

通勤災害Q&A

Q1:当日の交通状況により普段と異なる経路に迂回した場合の事故は?

A1:特段の事情により通勤のためにやむを得ず通る経路は「合理的な経路」となり、「通勤災害」として認められる。ただし合理的な理由もなく、著しく遠回りとなる経路をとる場合は、「合理的な経路」とはならない。

 

Q2:普段公共交通機関を利用して通勤しているが、たまたま自転車を利用した際の事故は?

A2:普段利用していない交通手段でも、通常用いられる交通手段(鉄道やバスなどの公共交通機関を利用、自動車、自転車などを本来の用法に従って使用、徒歩など)は、「合理的な方法」に該当し、「通勤災害」として認められる。

 

Q3:共働きの夫婦が、自転車通勤の途中で保育園を経由する経路上での事故は?

A3:通勤災害での「合理的な経路」とは、「一般に従業員が用いると認められる経路」のことで、「最短経路」とは限らない。また、「他に子供を監護する者がいない共働き夫婦」の場合、遠回りとなる経路であっても「合理的な理由」となり、「通勤災害」として認められる。

 

Q4:雨の日、晴れの日など、日によって、交通手段を変えているが、たまたま自転車を利用していた際の事故は?

A4:普段利用していない交通手段でも、通常用いられる交通手段(鉄道やバスなどの公共交通機関を利用、自動車、自転車などを本来の用法に従って使用、徒歩など)は、「合理的な方法」に該当し、「通勤災害」として認められる。

 

Q5:外勤業務に従事する労働者で、営業の担当区域が決まっている場合、自宅から最初の用務先へ到着するまでの事故は?

A5:外勤業務に従事する従業員で、特定区域を担当し、区域内にある数カ所の用務先を受け持って自宅との間を往復している場合には、自宅を出てから最初の用務先が業務開始の場所で、最後の用務先が業務終了の場所と認められている。したがって、外勤業務のうち、「特定区域を担当」している場合に限り、「自宅から最初の用務先」までの事故は、「通勤災害」として認められる。

 

Q6:外勤業務に従事する労働者で、営業の担当区域が決まっている場合、最初の用務先から次の用務先に移動している際の事故は?

A6:外勤業務に従事する従業員で、特定区域を担当し、区域内にある数カ所の用務先を受け持って自宅との間を往復している場合には、自宅を出てから最初の用務先が業務開始の場所で、最後の用務先が業務終了の場所と認められている。したがって、「最初の用務先から、最後の用務先」までの間の事故は、「業務災害」として認められる。

 

Q7:出張先に向かう途中の事故は?

A7:出張の場合には自宅を出て用務地に赴き、仕事を終えて自宅に帰るまでの全過程に業務遂行性が認められることとなり、その出張業務の成否や遂行方法について包括的に事業者が責任を負っていると判断される。また、出張中の個々の行為については、積極的な私用、私的行為・恣意的行為等にわたるものを除き、それ以外は一般に出張に当然または通常伴う行為として業務遂行性を認めることが相当であると解されることから、積極的な私的行為等の最中を除き「業務災害」として認められる。

 

Q8:通勤経路上の近くにある公衆トイレを利用している際の事故は?

A8:通常通勤の途中で経路近くの公衆トイレを使用する場合は「ささいな行為」として一般的には「逸脱・中断」とみなされず、「通勤災害」として認められる。

 

Q9 通勤経路近くの公園で短時間休息したり、通勤経路上のお店で飲み物等を購入したあとの帰宅途中の事故は?

A9 通勤の途中で経路の近くにある公園で短時間休息する場合や、経路上の店でタバコやジュースを購入する場合などの「ささいな行為」を行う場合には、一般的には「逸脱・中断」とみなされず、「通勤災害」として認められる。

 

Q10:通勤途中で日用品の購入など、日常生活上必要で最小限度の行為をおこない、通常の通勤経路に戻った後の事故は?

A10:「日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合には、「逸脱・中断」の例外としてみなされ、合理的な経路に戻った後は、「通勤災害」として認められる。

 

Q11:帰宅途中に、自宅とは反対方向で長時間食事をして、通常の通勤経路に戻った後の事故は?

A11:「自宅と事業所との往復にともなうささいな行為の域を出ている」とみなされた場合は、「通勤経路を逸脱後の事故」と判断され、「通勤災害」として認められない。

 

Q12:通勤途中、長時間のウインドーショッピングなど私的理由で通勤経路を中断・逸脱し、通常の通勤経路に戻った後の事故は?

A12:ウインドーショッピングなどの私的行為で、「日常生活上必要で最小限度の行為」に該当せず、「通勤経路を逸脱後の事故」と判断された場合は、「通勤災害」として認められない。

 

Q13:休日に、事業所からの緊急の呼び出しを受けて出勤する場合に、自宅を出てから事業所に到着するまでの事故は?

A13:休日に呼び出しを受けて出勤する場合や、予め出勤を命ぜられている場合には、休日であっても、自宅から現場までの途上は業務遂行中であると解されることから、出勤途中の事故でも、「業務災害」として認められる

※ 上記については一般的な事例です。実際の労災認定は、様々な要素を総合的に勘案して個別具体的に判断されることになり、上記の回答と異なる結果となる場合がございますのでご注意ください。