創設的届出とは
戸籍は、日本人の身分関係を登録し、その内容を公証するものです。したがって、日本人が国際結婚をした場合でも、市区町村役場への届出をするのですが、これには創設的届出と報告的届出の2通りがあります。
国際結婚の場合は、2人の国で結婚を成立させなければならないため、両国への届出が必要となりますが、日本で結婚した場合を例にあげると、日本人と外国人が結婚する際には、まず最初に市区町村役場へ「婚姻届」をおこない、その後に外国人配偶者の本国へ届出することになります。
報告的届出とは
この両国への届出のうち、市区町村役場への最初の届出が「創設的届出」といわれ、その後におこなう外国人配偶者の本国への届出が「報告的届出」といわれるものです。
日本人同士が海外で結婚式を挙げ、その後市区町村役場への届出をおこなうケースも増えていますが、外国方式での結婚を最初に成立させた場合には、その後に、その結婚証明書などを添付して市区町村役場へ届出をおこないますから、市区町村役場への届出は「報告的届出」ということになります。
つまり「創設的届出」とは、その届出によって、はじめて結婚が法律的にも成立する届出のことをいいます。そのため審査にあたっては、婚姻の実質的成立要件を審査して、受理するかどうかを判断することになります。
婚姻の実質的成立要件の審査
実質的成立要件の審査は日本人については、戸籍によって年齢、未婚であること、離婚歴がある場合にはいつ離婚したのかなどから、民法による要件を満たしているのかどうかの審査が容易にできます。
一方、外国人についてのそうした判断は簡単ではありません。そこでこうした問題を解決するために、外国人については、本国政府などが発行した「婚姻要件具備証明書」という証明書の提出が求められることになります。
この証明書に記載される内容は、本人の年齢、独身であること、本国の法律に照らして結婚することに何ら問題がないといった内容のものです。
「報告的届出」の際の審査
一方、「報告的届出」は、すでに外国人と日本人の結婚が外国の方式で済んでいるわけですから、市区町村役場は、その婚姻証明書など提出された証明書類が本物かどうか、その結婚に無効となる原因はないのかどうかなどを審査し、問題がなければ受理されることになります。
この場合、日本の民法による結婚の取消理由は不受理の原因とはなりません。
たとえば、海外で結婚した日本人が、その結婚によって重婚となったケースの場合に、相手国の法律で問題がなければ、日本では取消がおこなわれるまでは有効な結婚ということですから、この届出は受理せざるをえないことになります。
また、日本では重婚は取消理由ですが、相手の外国人の本国法では無効との定めがあれば、より重いほうの法律を採用することになりますから、この結婚の場合は無効ということになります。重婚などは海外での結婚ばかりでなく、日本の市区町村役場への創設的届出をおこなう際にも起こりえないことではありません。
たとえば、宣誓書を婚姻要件具備証明書として扱う場合や、申述書による婚姻届出の場合などにも、その宣誓や申述自体に虚偽があれば、婚姻の無効・取消原因が隠されていることになります。結婚はやはり一生の問題ですから、慎重に対処することが求められます。
跛行婚(ほこうこん)には要注意
「創設的届出」によって日本では有効に成立した結婚でも、相手の本国法では「報告的届出」の規定がないために、相手国においてはその結婚が無効となるケースなどもあります。これは各国間の法律が統一されていないことから発生するもので、こうした足並みのそろわない状態の結婚を「跛行婚」といっています。
日本を例にとっても、こうした事態は発生してきます。
日本人が日本国内で外国人と結婚するには、まず市区町村役場への「創設的届出」が先決です。これを相手外国人の在日大使館などで先に結婚手続きをして、その「報告的届出」を市区町村役場にしても方式が無効ですから、日本では結婚が成立しないことになってしまいます。
ただし、日本の場合はこの結婚証明書などを外国人の婚姻要件具備証明書とみなして、「創設的届出」をおこなうことができることになっていますから、まったく無効ということは起こりませんが、そうした方法での受理をおこなわない国もあります。
こうしたことを避けるためには、大使館などに問い合わせるなどして、相手外国人の本国法の検討も十分におこなうことが必要です。