在留特別許可は、在留特別許可という手続きそのものがあるわけではありません。退去強制手続きの中で、法務大臣の裁決として特に在留を認めるものです。
1.退去強制手続き
(1)入管への出頭
まず、不法残留の外国人が、各地方出入国在留管理局又は支局の警備部門に出頭します。在留希望者の出頭申告は毎日受けてはいませんので、申告日についても確認してから出頭しましょう。
(2)違反調査
出現した当日に、入国警備官による違反調査が始まります。出頭する際には、本人及び配偶者、そして随行者として書類を作成した行政書士などが付き添います。
違反事実(不法残留)があると、法律上はこの段階で「容疑者」として、身柄を収容することになりますが、最初のこの時期では提出書類に過不足があるかないかなどの実務的な書類調査がおこなわれ、調査後は帰宅できる場合が多いです。
違反調査はこの後、数回おこなわれる場合もあります。
出頭したカップルが本当に結婚しており、いつも一緒に生活しているのかどうかといった現状の抜き打ち的な調査もありますが、夫婦として普通に生活を続けていればよいのです。
(3)仮放免の申請
入国警備官による違反調査の中で、違反事実(不法残留)が判明すると、「収容令書」というものに基づいて、外国人配偶者の身柄を拘束することになります。
その場合は、刑事手続き上の「仮釈放」に似た、入管法上の「仮放免」といった手続きの申請をおこないます。
(4)仮放免の許可
提出書類がそろって認められると、「仮放免許可書」というものが発行され、通常違反調査が終了した後、保証金を預けて「仮放免」の許可を得ます。
その後、指定日には必ず入管に出頭し、夫婦としての現在の生活状況を報告しなければなりません。
また、仮放免の条件に違反すると、保証金は没収され、本人は収容されることになりますから、この間の生活状況には十分な注意が必要です。
(5)審理
その後、手続きは以下の3段階に分かれて継続します。
①入国審査官による違反審査
②特別審理官の口頭審理
③法務大臣の裁決
上記の3段階の手続きは、以下の通りです。
①入国警備官の違反調査が終わると、今度は入国審査官に担当が変わり、違反審査がおこなわれます。
内容としては、夫婦としての日常の生活状況が質問されます。入国審査官の審査で違反事実(不法残留など)があると、退去強制(強制送還)の認定が出されます。
ただし、これですべてが決定されるわけではなく、この認定に異議があるときは、認定の通知を受けてから3日以内に特別審理官の口頭審理を請求できます。
②さらに特別審理官の口頭審理の結果、認定に誤りがないとの判定がななれたが、それに異議があるときは、法務大臣に異議を述べることができます。
③法務大臣に対する異議は、書面で3日以内におこなう必要があります。この段階で異議を述べないと、そのまま退去強制されてしまいます。
2.在留特別許可
在留特別許可は、在留特別許可という手続きそのものがあるわけではありません。退去強制手続きの中で、法務大臣の裁決として特に在留を認めるものです。
そのため、法務大臣への異議を申し出ないと、そのまま退去強制されてしまいます。
異議のある場合は、以下の理由により、3日以内に書面で申し出ます。
①審査手続きの法令違反
②法令適用の誤り
③事実誤認
④退去強制が著しく不当
法務大臣の在留特別許可
法務大臣は異議の申し出に理由がないと認める場合でも、以下のような場合は、その外国人の在留を特別に許可することができます。
①永住許可を受けているとき
②かつて日本国民として日本に本籍を有したことがあるとき
③人身取引等により他人の支配下に置かれて日本に在留するものであるとき
④その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき
この手続きが済んで、法務大臣の裁決により「在留特別許可」がされると、配偶者のパスポートなどに「在留特別許可」の証印がされます。