外国人配偶者を日本に呼び寄せる場合と、妻の連れ子や親も日本に呼びたい場合の手続きについてご説明します。
法律相談
私(日本人)は、X国の現地法人に駐在員として滞在中、同国籍の女性と結婚して同居していましたが、この度急きょ単身日本に帰国しました。妻を日本に呼び寄せたいのですが、どうすればよいでしょうか。
また、10歳になる妻の連れ子や、将来的には一人暮らしの妻の母親も日本に呼びたいのですが、それは可能でしょうか。
「日本人の配偶者等」の在留資格で在留資格認定証明書を取得します。
連れ子は「定住者」、妻の母親は「特定活動」の在留資格を取得できる可能性があります。
1外国人配偶者の呼び寄せ
相談者の妻は、「日本人の配偶者等」の在留資格に該当します。そのため、妻を日本に呼び寄せる場合、相談者が申請代理人となって、申請に必要な提出資料をそろえて、「日本人の配偶者等」の在留資格で在留資格認定証明書交付申請を行うことになります。
2「日本人の配偶者等」の在留資格
(1)「日本人の配偶者等」在留資格の概要
①「日本人の配偶者等」の在留資格は、日本人の配偶者、若しくは民法817条の2の規定による特別養子、又は日本人の子として出生した者に与えられます(入管法別表第2)。
配偶者とは
「配偶者」とは、日本人と法律上の婚姻関係にある外国人のことをいいます。
内縁関係にある場合や日本人の相手方配偶者と死別したり離婚したりした場合は含まれません。
また、入管法の規定が「身分若しくは地位を有する者としての活動を行うことができる」と規定していることから(同法2条の2第2項)、法律上婚姻関係にあることに加え、出入国在留管理局の実務上、日本人の配偶者と同居して夫婦共同生活を営む必要があるとされています。
特別養子とは
「民法817条の2の規定による特別養子」は、養子縁組により、養父母との間に実子と同様の親子関係を成立させることを目的とする制度です。
特別養子縁組は、①子の利益のため特に必要があると認められる場合に、②原則として6歳未満の幼児について、③家庭裁判所の審判によって成立します。
特別養子は、生みの親との親子関係が消滅して、嫡出子の身分を取得するので、この在留資格が認められますが、一般の養子には認められませんので注意が必要です。
「日本人の子として出生した者」とは
「日本人の子として出生した者」とは、日本人の実子をいい、嫡出子のほか、認知された非嫡出子も含まれます。
ただし、その子の出生時に父若しくは母のいずれか一方が日本国籍を有していた場合、又は出生前に父が死亡していた場合に、その死亡時に父が日本国籍を有していたものに限られます。
したがって、その子が出生した後に父母いずれかが日本国籍を取得しても、「日本人の子として出生した者」には該当しません。
②この在留資格は、上陸審査基準(基準省令)の適用を受けません。
③この在留資格の在留期間は、5年、3年、1年又は6か月です(入管規則別表第2)。実際には、最初の在留期間は1年となることが多いようです。
(2)提出書類と注意すべき事項
相談者の場合、在留資格認定証明書交付申請に必要な書類は、以下のとおりです(入管規則別表第3)。
①当該日本人との婚姻を証する文書及び住民票の写し
・相談者の戸籍謄本(婚姻が記載されているもの)
・住民票の写し
②当該外国人又はその配偶者の職業及び収入に関する証明書
・相談者の在職証明書、納税証明書、源泉徴収票、確定申告書写し等
③日本に居住する当該日本人の身元保証書
・出入国在留管理局に備付けの用紙があります。
なお、上記以外に、出入国在留管理局に備えられている「質問書」という定型用紙があり、知り合った経緯、過去の出入国歴、結婚歴、来日後の住居、家族構成等を記入して提出する必要があります。
また、出入国在留管理局では、日本人の配偶者の申請について、いわゆる偽装結婚の可能性を考慮し審査を厳しくしています。
配偶者との年齢差が大きかったり、過去に退去強制歴があったりするなど、偽装結婚と疑われるような場合には、婚姻に至る経緯について詳しい補充書面を提出したり、結婚と婚姻生活の実態を示す写真を提出したりするなどして、審査官に申請内容を信用してもらえるよう工夫する必要があります。
3外国人配偶者の親族呼び寄せ
(1)在留資格
10歳になる妻の連れ子と妻の母親について、そのままあてはまる在留資格はありません。「日本人の配偶者等」にもあたりません。
相談者と彼らには血縁関係・身分関係がないからです。
そこで、日本に在留する必要性を個別的に明らかにして、開かれた在留資格である「定住者」の在留資格の付与を求めることになります。
(2)「定住者」在留資格
「定住者」の在留資格は、法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者に与えられます(入管法別表第2)。
したがって、この在留資格を付与するかどうかについては、個別の事案ごとに、法務大臣がその必要性を審査して判断することになります。
もっとも、個別の事案ごとの必要性を審査する基準がないと、手続が煩雑になったり、不明確になったりすることから、法務省は、上陸時にこの在留資格を付与する必要性を判断するための一定の基準を定めています(「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第2の定住者の項の下欄に掲げる地位を定める件」(平成2年法務省告示第132号)以下、「定住者告示」という)。
定住者告示は、概要以下の地位にある者に「定住者」の在留資格を付与するとしています。
①ミャンマー難民のうち一定範囲のもの(1号、2号)
②いわゆる日系2世(3号)並びに配偶者(5号ハ)及び未成年で未婚の実子(6号ハ)
③いわゆる日系3世(4号)並びに配偶者(5号ハ)及び未成年で未婚の実子(6号ハ)
④日本人の子として出生し、「日本人の配偶者等」の在留資格をもって在留する者の配偶者(5号)
⑤「定住者」(在留期間1年以上)の在留資格を持つ者の配偶者(5号5口)
⑥日本人又は一定の外国人(「永住者」、在留期間1年以上の「定住者」、「特別永住者」、これらの者の配偶者)又はその配偶者の扶養を受ける未成年で未婚の実子(6号イロハニ)
⑦日本人又は一定の外国人(「永住者」、期間1年以上の「定住者」、「特別永住者」、これらの者の配偶者)の6歳未満の養子(7号)
⑧いわゆる中国残留邦人等と一定のその親族(8号)
(3)本事例の場合
本事例の場合、外国人配偶者の連れ子は、定住者告示6号イ(日本人又は一定の外国人)に該当しますので、「定住者」の在留資格が付与される可能性があります。
一方、外国人配偶者の母親は、定住者告示にあてはまりません。もっとも、「定住者」や「特定活動」の在留資格は、個々の外国人について特別な理由を考慮して日本での在留を認める在留資格であることから、在留を必要とする特別な理由を考慮して付与される可能性があります。
現在の出入国在留管理局の実務では、70歳以上で外国人の本国で扶養や看護が期待できない場合や、70歳未満でも持病があり日本での療養看護が必要な場合、「特定活動」の在留資格が付与されることがあります。