在留管理制度

法律相談

私(外国人)は現在、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で、日本のソフトウェア会社でシステムエンジニアとして働いていますが、友人に誘われて、もっと給料のよい同業他社に転職しようと考えています。もし転職した場合、私の在留資格はどうなるのでしょうか。
別の職種に転職した場合は、どうなるのでしょうか。

 

転職先での活動も転職前と同種の在留資格に該当する場合には、転職後も以前の在留資格が有効であり、期間が満了した際に、在留期間更新許可申請を行います。

別の在留資格にあたる職種に転職する場合には、転職内容の資料を準備して、適格性があれば、事前に在留資格変更許可申請を行うことができます。

1同種の在留資格で転職する場合

(1)就労資格証明書について

日本に在留して就労することが認められている外国人は、法務大臣から、就労資格証明書の交付を受けることができます(入管法19条の2)。この就労資格証明書によって、その外国人が行うことができる収入を伴う事業の活動又は報酬を受ける活動を証明することができます。

本事例においては、新たな転職先での就労が、就労資格証明書に記載されている在留資格と同一とみなされるか否かの判定がなされなければなりません。

同業他社で現在と同じシステムエンジニアとして働くというのであれば、在留資格は同種と考えられますが、所属機関の移籍又は新たな契約の締結に伴う届出をする必要があります(同法19条の16)。

(2)転職に先立つ確認

就労資格を持って在留する外国人が転職する場合に、転職先での具体的活動が、当該就労資格に対応する活動に含まれるか否かについて明確でなく、これについて確認するために、就労資格証明書の交付を求めて申請した場合には、当該申請に係る活動が、①現在の在留資格と同種かどうか、②基準省令に適合するか否かが審査されます。

本事例においても、転職先の活動内容がシステムエンジニアとしての職種とみなされ得るかどうかについて、疑問のある場合には、転職の事実が次回の在留期間更新許可申請の際に、否定的に評価されて、更新許可が受けられなくなることを防ぐため、転職に先立って、就労資格証明書の交付を受け、転職に係る出入国在留管理局の評価を明らかにしておく方法もあります。

なお、具体的な申請手続としては、所定の書類を地方出入国在留管理局に提出する必要があります(入管規則19条の4第1項・2項)。

2別の在留資格にあたる職種に転職する場合

(1)相当な理由がある場合

在留資格を持って在留する外国人は、法務大臣に対し、在留資格の変更を申請し、在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があると認定された場合には、在留資格変更の許可を受けることができます(入管法20条1項~3項)。

本事例において、現在はシステムエンジニアとして、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を得ているものと考えられますが、この「技術・人文知識・国際業務」としての職種以外、例えば、教職等の職種に就くということであれば、別の在留資格を取得しなければなりません。

そのためには、転職先での活動がどの在留資格にあたるかを、まず確かめる必要があります。

いずれかの在留資格に該当するということであれば、転職前に当該在留資格を取得するため、在留資格変更許可申請書及び変更の申請に係る在留資格に応じた資料を、地方出入国在留管理局に提出する必要があります(入管規則20条1項2・項、別表第3)。

(2)短期滞在在留資格からの変更

観光目的等、短期滞在の在留資格で滞在する者は、在留資格の変更については「やむを得ない特別の事情」に基づくものでない限り、許可されることは難しいとされています(入管法20条3項)。短期滞在は、短期間の滞在を目的とするもので、査証発給や上陸手続が簡易なものとなっているからです。

3「高度専門職」への在留資格の変更

高度人材外国人の受け入れの促進を図るため、2015年4月から「高度専門職(入管規則別表第2第1号イ・ロ・ハ)」及び「高度専門職(同表2号イ・ロ・ハニ)」の在留資格が創設されました。

高度専門職の在留資格を得るためには、高度の専門的な能力を有する人材として法務省令で定める基準に適合する必要があります。この基準を定める高度専門省令では、学歴、職歴、年収、研究実績などの項目ごとに基準と加算点数を設定しています。

高度専門職1号イ・ロ・ハ

「高度専門職(1号イ)」は、相当の研究実績のある研究者、科学者、大学教授が、法務大臣が指定する日本の公私の機関で研究教育活動に従事する場合、

「高度専門職(1号口)」は、医師、弁護士、情報専門分野などの高度な専門資格を有する技術者などが、上記の機関で専門的な就労活動に従事する場合、

「高度専門職(1号ハ)」は、法務大臣が指定する日本の相当規模の企業の経営者、管理者等の上級幹部が当該企業の経営・管理活動に従事する場合に、
それぞれ付与されます。

高度専門職2号イ・ロ・ハ・二

「高度専門職2号」の「イ・ロ・ハ」は、「高度専門職1号」の「イ・ロ・ハ」に対応していますが、その違いは、活動に従事する場所が「法務大臣の指定する本邦の公私の機関」の縛りがない点です。

「高度専門職(2号二)」は、「高度専門職(2号イ・ロ・ハ)」のいずれかの活動と併せて行う活動です。

また、「高度専門職2号」は「高度専門職1号(イ・ロ・ハ)」(又は高度人材外国人としての「特定活動」)の在留資格で3年以上日本にて活動した外国人に与えられます。

「高度専門職1号イ・ロ・ハ)」は、それぞれ別々の資格ですので、所属機関の変更をする場合は、在留資格の変更を要します。

他方、「高度専門職2号」は、特に法務大臣が指定した公私の機関との縛りがないため、所属機関の変更は所属機関等に関する変更の届出は必要とされるものの、在留資格の変更の必要はありません。

「高度専門職」に対する優遇措置

「高度専門職」には、出入国管理上の優遇措置があります。

「高度専門職(1号イ・ロ・ハ)」の場合は、
①在留期間5年の付与、
②複合的な在留活動の許容、
③在留歴に関わる永住許可要件の緩和、
④入国在留手続の優先処理、
⑤配偶者の就労、
⑥一定の要件の下での親及び家事使用人の帯同
が認められます。

「高度専門職(2号)」の場合は、在留期間が無期限となり、就労に関す在留資格のほぼすべての活動が認められるほかに上記③⑤⑥の優遇措置の
適用があります。