法律相談1

外国人の在留資格更新・変更が不許可となった場合の救済方法についてご説明します。

法律相談

私は日系3世です。「定住者」の在留資格で日本に在留していましたが、この度、在留期間更新許可申請をしたところ、不許可となってしまいました。何とか日本に在留する方法はないでしょうか。

 

再申請若しくは行政訴訟の提起が考えられます。

1在留期間更新や在留資格変更の許可申請が認められなかった場合の不服申立方法

在留期間更新・在留資格変更許可申請につき、入管が不許可の方向で結論を出している場合、担当者との面談のために、申請者本人に対して窓口への出頭を促す旨のハガキが送付されます。

これに従って申請者が出頭した際、入管職員との面談において正式に結果が通知されます。その際、入管職員から、不許可の理由について説明を受けることができます。

そこで実務的には、まだ在留期間の満了前であれば、さらに資料を補充するなどして、あらためて在留期間更新・在留資格変更許可申請をして出入国在留管理局に再考を促すことになります。

また、在留期間が切れて非正規滞在の状態になったときでも、その期間がごく短いもので、在留期間内に申請していれば問題なく認められたという場合には、在留期間満了のときにさかのぼって更新、変更の申請の「特別受理」という扱いをしてもらえることがあります。

そのような場合以外に入管法上、法務大臣の在留期間更新・在留資格変更許可申請に対する不許可処分に対する再審査ないし不服申立手続は入管法に定められていません。

したがって法律的な不服申立の方法としては、国を被告として、当該不許可処分の取消訴訟を提起することになります。この場合、処分の通知を受けた日から原則として6か月以内に訴えを提起しなければなりません(行訴法14条)。

2処分取消訴訟の審理

入管法上、在留資格变更許可、永住許可、在留期間更新許可、在留資格取得許可等の申請については、「当該外国人が提出した文書により相当の理由があるときに限り」許可されることになっています(入管法20条)。

そこで判例上、在留に関する許可要件を満たしていることについての立証責任は原告側にあり、またこれらの許可をするかどうかは法務大臣(又は権限の委任を受けた地方出入国在留管理局長)の裁量行為であると解されています。

このことの意味は、在留関係の処分取消訴訟においては、直接裁判所が証拠に基づき、在留資格該当性や在留を許可することの相当性を判断するのではなく、処分庁である法務大臣や地方出入国在留管理局長が、不許可処分を相当とする判断をした過程を審査し、そこに事実誤認や不合理な点があって、裁量権の範囲を超え又はその濫用があったと認められる場合に限り、裁判所はその処分を取り消すことができるということです(行訴法30条)。

特に外国人の在留関係では、在留期間更新許可申請に対する不許可処分に関する【最大判昭和53・10・4民集32巻7号1223頁(マクリーン判決)】がリーディングケースとされています。

この判決は、法務大臣の不許可判断が違法となるのは、「全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限られる」と判示しており、これ以降の判決は、少なくとも一般論としてこれを踏襲するとしているものが大半です(また、取消訴訟を提起すると被告である国は必ずこの部分を引用してきます)。

以上の結果として、在留に関する行政処分の取消訴訟は、行政訴訟のうちでも勝訴することがなかなか難しい種類の裁判となっています。

3係争中の在留資格について

ところで、面談の際、出入国在留管理局側から出国準備のための「短期滞在」や「特定活動」への変更申請を示唆されることがあります。

これに安易に応じてしまうと、変更後の在留期間満了により帰国を余儀なくされ、行政訴訟において当初の在留資格変更不許可処分の効力を争おうとしても、「訴えの利益を欠く」として、請求を却下されるおそれがあります(訴えの利益を否定した判例として【東京地判平成4・3・9行裁集43巻3号298頁】肯定した判例として【大阪地判平成7・8・24判夕891号109頁】)。

他方で、これに応じることなく、再申請中ないし訴訟係属中に、在留期間が満了してしまうと、不法滞在となってしまいます。

その場合には、収容令書による収容を受けたり、退去強制まで至った場合には上陸拒否事由に該当し、上陸拒否期間が生じる(入管法5条1項9号)というデメリットがあります。

そのため、改めて希望する在留資格で入国する見込みがある場合には、出国準備のための在留資格変更に応じて一度出国し、あらためて希望する在留資格で在留資格認定証明書を取得して入国することも一つの方法です。

このように、不許可を争うとしても、不法滞在のリスクがあることを念頭に置きつつ、出入国在留管理局から示された不許可理由について争う余地があるか否かを慎重に検討する必要があります。