法律相談1

法律相談

私は、日本在住の日本人男性です。非正規滞在の中国人女性と結婚し、在留資格取得の手続をとろうとしていた矢先、妻が警察に逮捕された後、出入国在留管理局に送られ、2年前に退去強制処分になってしまいました。妻が退去強制させられたのはこのときがはじめてです。その後も、私が年に数回中国へ行き、手紙のやりとりも続けています。妻を日本に呼び寄せる方法はないでしょうか。

 

退去強制となった日から5年以内は、上陸拒否事由に該当します。そこで、上陸を特別に許可すべき事情があることを明らかにする資料を添えて、「日本人の配偶者等」の在留資格認定証明書の交付申請をし、同証明書の交付を得てから来日し、上陸の許否の特例の適用を求めることが考えられます。

1上陸拒否事由

入管法5条1項各号に定める上陸拒否事由は、以下のとおりです。

①法定の感染症の患者等(1号)

②法定の精神障害者(2号)

③貧困者、放浪者等(3号)

④日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、1年以上の懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者(政治犯罪は除く)(4号)

⑤薬物事犯・売春事犯関係者(5号、6号、7号、9号)

⑥国際会議等を暴力的に妨害するおそれのある者(5号の2)

⑦人身取引を行い又は助けた者(7号の2)

⑧銃刀類若しくは火薬類を不法に所持している者(8号)

⑨退去強制若しくは出国命令による出国となった日から一定期間を経過していない者(9号)

⑩別表1の在留資格を有する者が特定の犯罪で懲役若しくは禁錮の刑の判決を宣告され、その後出国している間に判決が確定してから5年を経過していない者(9号の2)

⑪テロ行為など公安を害する可能性のある者(10~14号)

2上陸の拒否の特例

本事例のように、申請者が以前に一度退去強制となったことがある場合、その日から5年以内は入管法5条1項9号ロに該当するので、上陸特別許可が認められない限り、上陸申請は許可されないのが原則です。

なお、1999年の入管法改正以前は、退去強制となった外国人の上陸拒否期間は「1年」でしたが、同改正により「5年」へと大幅に伸長されました。ただし、このときの国会審議において、日本国内に家族を残しているなど人道上の配慮が必要なケースに対応できるよう、上陸特別許可の運用については、「家族的結合等……に十分配慮」すべきとの付帯決議が両院で可決されています。

さらに、上陸拒否事由がある者の再入国手続について、従来は上陸特別許可が必要でしたが、2009年の入管法改正により、「上陸の拒否の特例」制度が導入され、手続が簡素化されました(入管法5条の2)。

上陸の拒否の特例とは、一定の上陸拒否事由に該当する方が、以下のいずれかに該当する場合で、法務大臣が相当と認めるときは、不法残留により退去から5年を経過していないなど一定の上陸拒否事由が該当している場合であっても、そのことのみをもっては上陸を拒否しないこととすることができる、とする制度です(入管規則4条の2第1項)。

上陸の拒否の特例が適用される場合には、当該外国人に対して、その旨の通知書が交付されます。

①再入国許可が与えられた場合

②難民旅行証明書が交付された場合であって、在留資格を有する場合

③在留資格認定証明書が交付された場合

④査証(ビザ)を取得した場合で、特別の理由があると法務大臣が認めた場合

⑤在留資格変更許可、在留期間更新許可、在留資格取得許可、永住許可、在留特別許可など在留にかかる許可を受け、在留資格をもって在留している場合

具体的には、前記の付帯決議にある「家族的結合」があるケースなどにおいては、在留資格認定証明書の交付が受けられる可能性があり、交付を受ければ上記③に該当するので、上陸特別許可を経ずに入国できる可能性が高いといえます。

3本事例の場合

本事例の場合、妻が退去強制となってから2年しか経過していないので、上陸拒否事由に該当します。

とはいえ、前記の付帯決議にある「家族的結合」があるケースなので、上陸の拒否の特例に該当するとして上陸が認められる可能性はあります。

その手続ですが、来日前に、上陸を特別に許可すべき事情があることを明らかにする資料を添えて、「日本人の配偶者等」の在留資格認定証明書の交付申請をします。

具体的には、
退去強制後も配偶者のもとを頻繁に訪れていること、
手紙のやりとりをしていること、
電話や電子メールのやりとりをしていること
などを証明する資料を提出します。

そして、出入国在留管理局において、家族的結合についても審査の上、同証明書の交付の可否が決せられます。

このような手続を経て在留資格認定証明書が交付されれば、来日までの事情変更がない限り、原則として上陸が許可されることになります。