法律相談1

法律相談

私は、「定住者」の在留資格で滞在している外国人男性です。弟が私を訪ねて来ることになり、空路日本に到着し、空港で「短期滞在」の在留資格を申請したのですが、就労目的であると疑われたらしく、申請が許可されませんでした。上陸を認めてもらうにはどうすればよいですか。

 

口頭審理に備え、「短期滞在」の上陸条件に適合するとの資料を提出するなどの対応をする必要があります。
親族訪問の場合、訪問する親族の陳述書、来日前のやりとりが記載された手紙、滞在後の予定、滞在費についての資料などをそろえるべきでしょう。

口頭審理の際に、代理人を選任することもできます。

また、親族が証人として出頭することも検討する必要があります。
口頭審理に間に合わなかった場合は、異議の申出の手続をとり、同様の資料を提出する必要があります。

異議の申出も認められない場合は、退去命令の対象となります。

1特別審理官への引渡しと口頭審理

入国審査官は、申請者が上陸条件に適合すると判断した場合は上陸許可の証印を押し(入管法9条1項)、適合しないと判断した場合は、口頭審理を行うため、申請者を特別審理官へ引き渡さなければなりません(同法9条6項)。

口頭審理は、申請者が特別審理官に引き渡された後、速やかに行わなければならないとされています(同法10条1項)。

口頭審理には代理人の出頭、証拠の提出、証人尋問が認められています(同3項)。許可を受ければ、親族や知人の1人が立ち会うこともできます(同4項)。

代理人の資格に、法律上の制限はなく、弁護士や行政書士ではなくても代理人になれます。

口頭審理の結果、申請者が上陸条件に適合すると認定されたときは、直ちに申請者の旅券に上陸許可の証印が押されます(同8項)。

逆に、適合しないと認定されたときは、特別審理官は申請者に対し速やかに理由を示してその旨を知らせ、さらに、その認定に異議を申し出ることができる旨を知らせなければなりません(同10項)。

2異議の申出と法務大臣裁決、上陸特別許可

上陸条件に適合しないと認定された申請者は、その通知を受けた日から3日以内に法務大臣に対し異議を申し出ることができます(入管法11条1項)。

異議の申出があると、法務大臣は、異議の申出に理由があるかどうかを裁決し、その結果を主任審査官に通知します(同3項)。

異議の申出に理由があるとの法務大臣裁決がなされた場合、直ちに申請者の旅券に上陸許可の証印が押されます(同4項)。

これに対し、異議の申出に理由がないとの法務大臣裁決がなされた場合は、退去命令が発せられます(同6項)。

なお、入管法12条1項は、上記の裁決にあたり、異議の申出が理由がないと認める場合でも、「法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるとき」などにおいては、例外的に上陸を特別に許可することができるとの例外を定めています。

この上陸特別許可がなされると、在留資格が認められ、申請者の旅券に上陸許可の証印が押されることになります(入管法12条2項、11条4項)。

3仮上陸許可

主任審査官は、上陸手続において特に必要があると認める場合には、その手続が完了するまでの間、申請者に対し仮上陸を許可することができます(入管法13条1項)。仮上陸が許可された場合、申請者に対し仮上陸許可書が交付されます(同2項)。

そのほか、住居等の制限、出頭義務、保証金の納付(同3項)など、退去強制手続における仮放免の場合と同様の規定があります。

4本事例の場合

在留資格「短期滞在」は、本事例のような親族訪問目的での滞在のほか、観光、短期商用などが典型例です。

しかし、特に査証免除措置がとられている場合は、査証取得のための事前の手続がないため、上陸手続の際に在留資格該当性がないと判断される可能性があります。

具体的には、
報酬を受ける活動を行う可能性はないか、予定されている期間滞在できるだけの資金があるかなどが審査され、

そのために、
観光日程、訪問する親族に係る資料、
会合の場所及び内容を明らかにする資料、
滞在に必要な費用を支払えることを明らかにする資料
などの提出を求められることがあります(「入国・在留審査要領」法務省出入国在留管理局)。

そして、本事例のように、親族訪問目的で来日したが、入国審査官による審査において上陸が許可されなかった場合、口頭審理において、上記の資料をあらためて提出する必要があります。
代理人が就任して資料を追完し、場合によっては、親族が証人として出頭することが必要となる場合もあるでしょう。口頭審理に間に合わない場合は、異議の申出をして、同様の資料を提出する必要があります。