法律相談2

法律相談

私はブラジルにいる日系人3世ですが、日本で就労することができますか。
また、永住することはできますか。
日系人4世である私の子についてはどうですか。

 

「定住者」の在留資格を取得すれば、就労することができます。
また、定住許可後5年以上日本に在留した場合には、「永住者」の在留資格を取得できる可能性があります。

1「日系人3世」の在留資格

一般に日系人3世(以下、「3世」という)とは、海外へ移住した日本人(1世)の子(2世)の子を指し、「定住者」の在留資格(定住者告示3号・4号)を取得することができます。

定住者告示3号は「日本人の子として出生した者の実子」、同4号は「日本人の子として出生した者でかつて日本国民として日本に本籍を有したことがあるものの実子の実子」と規定しています。

ところで、同じ3世といっても、1世が外国へ帰化せず日本国籍を有している場合と、外国へ帰化して日本国籍を離脱してしまっている場合があります。

前者の場合、若しくは、後者のうち2世が生まれた時点では、まだ1世が日本国籍を有していた場合、3世は「日本人(1世)の子として出生した者(2世)の実子」ですから、定住者告示3号に基づき定住者の在留資格を取得することができます。

また、後者のうち2世が生まれた時点で、既に1世が日本国籍を離脱していた場合は、「日本人の子として出生した者でかつて日本国民として日本に本籍を有したことがあるもの(1世)の実子(2世)の実子」(定住者告示4号)として、定住者の在留資格を取得することができます。

なお、2世は、1世が日本国籍を離脱していない場合、若しくは、1世が日本国籍を離脱する前に出生した場合であれば、日本人の子として出生した者に該当するため、「日本人の配偶者等」の在留資格の取得が可能です。

これに対し、1世が日本国籍を離脱した後に出生したのであれば、「日本人(1世の親)の子として出生した者(1世)の実子」ですから、定住者告示3号に基づき定住者の在留資格を取得することになります。

2「定住者」の在留資格の要件・期間等

定住者の在留期間は、定住者告示に該当する類型の場合、5年、3年、1年又は6か月です(入管規則3条、別表第2)。

「定住者」の在留資格は、別表の下欄に該当性の要件が記載されていない、いわゆる開かれた要件を有する在留資格であり、法務大臣が、人道上の理由その他特別な理由を考慮し、一定の在留期間を指定して居住を認めます。在留期間に制限はありますが、活動に制限はないため、日本での就労が可能です。

3世を理由として「定住者」の在留資格を取得するには、素行が善良であることが求められます。在留期間を更新する場合、又は既に「短期滞在」など他の在留資格で在留している外国人が、3世であることを理由に「定住者」の在留資格に変更する場合も同様です。

しかし、日系人にのみこのような要件を課すことは不合理な差別であるという指摘もあり、素行の善良性の判断は慎重に行われる必要があります。

東京地判平成24年3月28日は、軽微な前科により在留期間更新が不許可となり、その後、退去強制令書を発付された事例で、退去強制令書の発付を取消しました。

実務では、道路交通法違反による罰金以外の刑事前科がある場合等には、原則として素行善良要件を満たさないとされますが、刑法34条の2に基づき刑の言渡しが効力を失った時には、前科があっても素行が善良でないものとは扱わないとされています。

また、既に「定住者」で日本で生活している場合については、素行善良要件を満たさない場合であっても、本人の生活状況や家族との関係等の事情を考慮して在留期間更新が許可されることもあります。
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3「日系人4世」の在留

3世と異なり、日系人4世(以下、「4世」という)については、4世であることのみをもって「定住者」で在留することはできません。

しかし、3世として「定住者」を許可されている親の扶養を受ける未成年で、未婚の実子として在留する場合には、「定住者」の資格該当性があるとされます(定住者告示6号ハ)。

これにより在留資格「定住者」で何年か日本で生活した後、成人したり結婚したりして親から独立した場合には、そのことのみでは在留期間更新は不許可にならず、「定住者」での在留継続が可能です。

これに対して、日本に3世の親が住んでいない場合や、本人が既に成人している場合、「定住者」で来日することはできません。

一方、平成30年7月1日より、「日本と現地日系社会との結びつきを強める架け橋になる人材を育成する」として、素行、日本語能力、生計維持能力等の要件を満たす18歳以上30歳以下の4世を「特定活動」で受け入れる制度が開始されました。

この制度は、日本に在留できる期間が通算5年間と期間が限定されており、これまでの「定住者」による受け入れとは性格を異にしています。

4帰国支援事業を利用した方の再来日

2009年、リーマン・ショック後の不況で失業した日系人を対象に、政府は帰国支援金を支給するという事業を実施し、これを利用して2万1,675人の日系人が帰国しました。

この帰国支援事業を利用した人に対しては、当分の間、同様の身分に基づく在留資格による再入国は認められないとされていましたが、この措置は入管法上の根拠が不明なものでした。

2013年10月、政府は、帰国支援事業を利用した日系人が再び「定住者」等の在留資格で来日することを認めましたが、日本で就労を予定している方については、在外公館における査証申請の際、1年以上の雇用期間のある雇用契約書の写しの提出を条件としました。

5「永住者」の在留資格

「永住者」とは、法務大臣が永住を認める者をいいます。永住者には在留期間の制限がなく、また、日本において可能な在留活動にも制限がありません。

一般的な原則としては、「永住者」の在留資格を取得するには10年以上継続して日本に在留していることが必要ですが、定住者の在留資格を有する者については、定住許可後5年以上日本に在留していることとされています。