結婚する外国人相手が日本に不法残留している場合、家族状況、素行、内外の諸情勢、人道的な配慮の必要性、他の不法滞在者へ与える影響、残留年数、他の刑罰法令違反状況などが総合てきに勘案され、在留特別許可をもらえる場合があります。

不法残留などの外国人と結婚する場合の在留特別許可

出入国在留管理局は、結婚相手である外国人が日本に合法的に在留しているか、または合法的に入国してくるかを審査しますが、結婚する相手は必ずしも合法的に在留している外国人ばかりとは限りません。

現実的には、日本に不法残留(いわゆる超過滞在)している外国人とたまたま恋をして、結婚するといケースもあります。

合法非合法を問わず、結婚そのものは、本人同士の個人的な問題ですから、不法滞在者と結婚することもできます。ただし、結婚したからといって、日本にそのまま滞在できるかというと、これは日本の入管法上の別問題です。

しかも、不法に残留しているという事実は、入管法違反ですので、その外国人が、ただ日本人と結婚した事実をもって、日本に引き続き滞在できる権利があるというわけではありません。

そのため、このままこのようなカップルが日本で何とか合法的に暮らすためには、一般的な手続きとは別の法的手続きが必要になります。

この手続きでは、不法残留の外国人が日本に在留を希望する理由、家族状況、素行、内外の諸情勢、人道的な配慮の必要性、他の不法滞在者へ与える影響、残留年数、他の刑罰法令違反状況などのさまざまな事情が総合的に勘案されることから、必ずしも法務大臣の「裁決」により日本に滞在できるようになるとは限りません。

それでも日本で生活をしていく希望がある場合は、地方出入国在留管理局に出頭して、日本で生活したい理由などを申し述べることになります。

在留特別許可判断の積極的要素

法務省は、「在留特別許可に係るガイドライン」を発表していますが、在留特別許可の許否判断をおこなうにあたっての積極要素としては、以下のものがあります。

①永住許可を受けているとき

②かつて日本国民として日本に本籍を有したことがあるとき

③人身取引等により他人の支配下に置かれて日本に在留するものであるとき

そのほか、日本人と婚姻が成立している場合は、相当期間共同生活をし、相互に協力して扶助していること、夫婦間に子がいるなど、婚姻が安定して成熟している、そして、①自ら地方出入国在留管理局に出頭申告したこと、②日本での滞在期間が長期に及び定着性が認められることなどがあげられています。

在留特別許可判断の消極的要素

また、消極的要素としては当たり前のことですが、重大犯罪などにより刑に処せられたことがあること、出入国管理行政の根幹に関わる違反又は反社会性の高い違反をしている場合です。

不法滞在助長罪、旅券の不正受交付などにより刑に処せられたことがある場合、売春行為をおこなわせた場合などがあたります。

在留特別許可にあたるかどうかの判断は、積極要素と消極要素のそれぞれを個別に評価し、考慮すべき程度を勘案した上で、積極要素として考慮すべき事情が消極要素として考慮すべき事情を明らかに上回る場合には、在留特別許可の方向で検討することとなります。

したがって、積極要素が1つ存在することで許可されるものでもありませんし、逆に、消極要素が1つあると許可の見込みがないというものでもありません。

なお、結果として許可されない場合には、退去強制令書が発付され、退去強制となります。