Q.
この度、フィリピンの関係会社から、プログラマーの研修を行うために研修生を受け入れることになりました。滞在期間は3か月で、滞在期間中は研修手当(生活費)として月60,000円を渡す予定です。
税務上、何か問題は発生しますでしょうか。

A.
「研修ビザ」で入国する場合は、ビザ申請の際に必要となる「研修生処遇概要書」に基づいて支払うもので生活費として実費相当額ならば、税務署に特に手続きを取ることなく非課税となります。

フィリピンからの研修生が、研修ビザで来日するか否かにより、分けて検討する必要があります。

1. 研修ビザで来日し、当社が研修生に支給するビザ申請の際に認められた月60,000円の金額ならば、研修手当(食費等)は、生活費としての実費弁償的なものであり、人的役務の提供による対価とはいえないため非課税です。

しかし、ビザ申請の際に認められた金額を超えた金額を支払った場合や、研修以外に実際に仕事をしてもらって、その対価として賃金を支払ってしまうと給与所得として課税されます。

その場合、60,000円以上の部分だけが課税されるのではなく、60,000円も含めた全額が課税されます。

2. 研修ビザではなく他の種類のビザで入国した場合は、課税となるケースもあると考えられます。

例えば、就労ビザで入国した場合、実際は研修であっても、人的役務の提供とみなされてしまう可能性があります。

観光ビザ(短期滞在)で入国した場合は、観光ビザ(短期滞在)はあくまでも観光のためのビザですので、税務上、同様の問題が起きますし、入国管理の観点からも問題が生じかねないといえます。

3. なお、就労ビザで入国し就労した場合、その給料に対しての課税は、日比租税条約を検討する必要があります。

日比租税条約では、①事業修習者、②事業習得者、③政府計画参加者の3種類について定めています(日比租税条約§21)。

①事業修習者とは、決められた定義はありませんが、一般には、企業内の見習研修生や日本の職業訓練所等において訓練、研修を受ける者とされています。

事業修習者の場合、次のものは日本の税金が課されません。

イ 生計、教育、勉学、研究又は訓練のための国外(フィリピン)からの送金

ロ 滞在地国(日本)内の人的役務提供所得で、年間1,500米ドルまで

ハ 公益団体からの交付金、手当、奨学金

②事業習得者も、決められた定義はありませんが、一般には、企業の使用人として又は契約に基づき、当該企業以外の者から高度な職業上の経験等を修得する者とされています。

事業習得者の場合は、滞在1年以内であって、国外(フィリピン)からの送金及び関連報酬の合計金額が、年間4,000米ドルまでが免税とされています。

③政府計画参加者の場合は、滞在1年以内であって、国外(フィリピン)からの送金及び関連報酬の合計金額が、年間4,000米ドルまでが免税とされています。