外国人が日本に在留するにあたり、どのような管理制度が適用されるのでしょうか。
現行の在留管理制度は、2012年7月に施行された改正入管法に基づいています。日本に中長期間にわたり在留する外国人(中長期在留者)を対象に、法務大臣が在留管理に必要な情報を継続的に把握しようとするものであり、対象者には「在留カード」が交付されます。
1 現行の在留管理制度
法務大臣は中長期在留者の氏名、生年月日、性別、国籍、住居地、所属機関その他在留管理に必要な情報を取得・整理します(入管法19条の4、19条の18第1項)。
ただし、個人情報保護の観点から、法務大臣が取得・保有できる情報は、在留管理の目的を達成するために「必要な最小限度の範囲」でなければならず、当該情報の取扱いにあたっては「個人の権利利益の保護に留意しなければならない」とされています(同法19条の18第3項)。
変更があった場合の届出義務
また、入管法19条の16は、雇用関係や婚姻関係などの社会的関係が基礎となっている在留資格について、その社会的関係が継続しているか否かを把握するため、中長期在留者に対し、社会的関係に変更があった場合の届出を義務づけています。
したがって、日本の企業や学校に所属している外国人は、所属機関に変更があった場合、変更が生じた日から14日以内にその旨を届け出なければなりません(同法19条の16第1号・2号)。
また、配偶者として「家族滞在」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」で在留している外国人が、配偶者と離婚又は死別した場合も同様です(同条3号)。
現行の在留管理制度導入に伴い、外登法に基づく外国人登録制度は廃止されました。その一方で住民基本台帳法が改正され、中長期在留者については、日本人と同様に住民票が作成されることになりました(住民基本台帳法30条の45)。
ところで、従前の外国人登録制度では、不法入国者、超過滞在者などの非正規滞在者も外国人登録をすることができ、これを根拠に母子手当、教育など自治体が提供する行政サービスを一定範囲で受けることができていました。
しかし、新たな在留管理制度はこれら非正規滞在者を対象としておらず(同条参照)、彼らの存在を自治体が把握する手段がなくなりました。
新たな在留管理制度の導入により、受給が打ち切られるなどの事態が生ずることが懸念されましたが、そのような動きはあまり見られていないようです。
ただ、新たに入国したり、転入したりした非正規滞在者の存在が地方自治体に把握されなくなったため、必要な支給を受けられない外国人が相当数いるものと考えられます。
2 在留管理制度の対象者
入管法上の在留資格をもって適法に日本に中長期間在留する外国人で、具体的には次の①~⑥のいずれにもあてはまらない者が対象です(入管法19条の3)。
①「3か月」以下の在留期間が決定された者
②「短期滞在」の在留資格が決定された者
③「外交」又は「公用」の在留資格が決定された者
④これらの外国人に準じるものとして法務省令で定める者(詳細は、入管法規則19条の5)
⑤特別永住者
⑥在留資格を有しない者
3 在留カードとは
在留カードとは、対象となる外国人に対し、上陸許可や在留資格の変更許可、在留期間の更新許可等の在留に係る許可に伴って交付されるものです(入管法19条の4)。
在留カードには、写真が表示されるほか、次の事項が記載されます。また、偽変造防止のためICチップが搭載され、券面記載事項の全部又は一部が記録されます。
①氏名、生年月日、性別、国籍等
②住居地
③在留資格、在留期間、在留期間満了日
④在留許可の種類及び年月日
⑤在留カードの番号、交付年月日、有効期間満了日
⑥就労制限の有無
⑦資格外活動許可を受けているときはその旨
なお、16歳以上の外国人には在留カードの常時携帯義務が課されます(同法23条2項・5項)。
4 「特別永住者」について
「特別永住者」については、新たな在留管理制度の対象とはならず、「特別永住者証明書」が交付されます(入管特例法7条)。
特別永住者証明書の記載事項は、以下の必要最小限の内容とし、在留カードの記載事項と比べて大幅に削減されています(同法8条)。
①氏名、生年月日、性別及び国籍等
②住居地
③特別永住者証明書の番号、交付年月日及び有効期間満了日