日本に上陸したり、上陸後に在留期間の更新をの際、偽造文書を提出したり、申請書に事実と異なる記載をしたりしたことが判明した場合や技術・人文知識・国際業務、技能、留学等を持って日本に在留している外国人が、正当な理由がないのに、その在留資格に係る活動を継続して3か月以上行っていない場合には、在留資格の取消事由に該当します。
法律相談
日本在住の外国人男性です。日本でコックとして働くという理由で、「技能」の在留資格で上陸しましたが、実際は、コックとしての経歴はなく、日本では単純労働に従事しています。今回、出入国在留管理局から、コックとしての経歴に偽りがあるとして、出頭するよう命じられました。今後どうなるのでしょうか。
出頭し、事情聴取をされた後、在留資格の取消事由があると判断された場合には、在留資格の取消通知が送られ、出国を求められることになります。
1在留資格が取り消される場合
日本に上陸したり、上陸後に在留期間の更新をする際に、偽造文書を提出したり、申請書に事実と異なる記載をしたりしたことが判明した場合のほか、入管法別表第1の在留資格(技術・人文知識・国際業務、技能、留学等)を持って日本に在留している外国人が、正当な理由がないのに、その在留資格に係る活動を継続して3か月以上行っていないことが判明した場合には、在留資格の取消事由に該当します(入管法22条の4第1項3号・6号)。
このほか、別表第1の在留資格を持って日本に在留している外国人が、正当な理由がないのに、その在留資格に係る活動を行っておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留している場合や、日本人や永住者の配偶者が6か月以上、その活動をしない場合や、中長期在留者が住居地の届出を怠ったり、虚偽の届出とした場合なども在留資格取消し対象となります。
したがって、上陸の時点からコックの経歴がないにもかかわらず、あると偽っていた場合には、事実と異なる記載をしたことになり、また、仮に経歴があったとしても、上記の資格に係る継続した活動をしていない場合には、在留資格の取消事由があることになります。
2在留資格取消の手続
法務大臣は、在留資格の取消しをしようとする場合には、入国審査官が、予め在留資格取消対象者から意見を聴取する機会を設けなければなりません(入管法22条の4第2項)。
この意見聴取手続には、未成年者の親権者、後見人等の法定代理人のほか、在留資格の取消しを受ける者が代理人として委任した弁護士などの代理人が出席することができます(同4項)。
もし地方出入国在留管理局への出頭を通知されたにもかかわらず、本人やその代理人が指定された期日に出頭しなかった場合には、正当な理由がない限り、意見の聴取を行わないで、在留資格が取り消されることがあります(同5項)。
そのため、病気等のやむを得ない事情により、指定された期日に出頭できない場合には、予め地方出入国在留管理局に連絡しておく必要があります。
この意見聴取手続では、前記したようなコックの経歴があったかどうか、当初からコックとして働く予定があったのかどうかなどの点について、質問されることになると思われますので、もし事実と異なる部分がある場合には、その旨をこちらから説明する必要があり、必要であれば証拠も持参していくべきです。
3取消処分後の手続
在留資格を取り消すことを決定した場合、その事実は在留資格取消通知書により本人に通知します(入管法22条の4第6項)。
本人にその通知書を直接交付する場合には、旅券上に在留資格を取り消した旨の表示をします。
在留資格を取り消された後の取扱いは2種類あります。
不正手段等の行使について悪質性が高い場合(上陸拒否事由に該当していることを偽った場合や、その他偽りその他不正の手段により在留資格を得た場合)には、在留資格を取り消された後、直ちに退去強制の手続がとられますが、不正手段等の行使について悪質性が高くない場合(申請人以外の者が事実と異なる文書等を提出した場合など)や、正当な理由がないのに在留資格に係る活動を継続して3か月以上行わないで在留している場合には、在留資格が取り消される際に、30日を超えない範囲内で出国するために必要な準備期間(出国猶予期間)が指定されます(同7項)。
別表第1の在留資格を持って日本に在留している外国人が、正当な理由がないのに、その在留資格に係る活動を行っておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとしている場合については、原則、出国猶予期間が与えられますが、逃亡のおそれがある場合には与えられないこともあります。
本事例の場合は、コックとしての経歴を偽ったと認定された場合には、直ちに退去強制の手続がとられることも念頭に置く必要があります。
これに対して、出国猶予期間が与えられ、指定された期間内に出国する場合は、在留期間内に出国する場合と同様に取り扱われます。