法律相談1

法律相談

私は数年前に、「短期滞在」90日間の在留資格を得て入国し、そのまま日本に住んで働いていました。仕事もなくなったので帰国しようと思いますが、警察や出入国在留管理局に摘発されて強制送還になる場合と比較して、自主的に出入国在留管理局に出頭した場合の方が有利なのでしょうか。

 

自主的に出入国在留管理局に出頭した場合は、収容を回避できること、上陸拒否期間が1年になることなどのメリットがあります。

1非正規滞在者の原則的帰国手続

在留期間経過後も日本国内にとどまった非正規滞在の外国人は、いわゆる不法残留として退去強制手続の対象となり、また、刑事罰(3年以下の懲役・禁錮又は300万円以下の罰金若しくはその併科)も定められています(入管法70条)。

刑事罰については、その外国人が以前に退去強制されたことがなく、かつ他に一般刑法犯などの犯罪行為を犯していない場合には、警察官などが逮捕しても刑事事件として立件せず、出入国在留管理局に引き渡すという扱いが一般的にとられています。

また入国警備官など出入国在留管理局職員が摘発した場合には、不法残留だけでなく、密航や偽造旅券での入国などの、いわゆる不法入国事案でも刑事処罰を求めるために警察に引き渡すことは行われていません。

しかし、在留資格なしに日本にとどまることは退去強制事由に該当するので、原則として収容令書に基づいて収容され(同法39条1項)、退去強制手続が進められることになります。

この場合、退去強制後5年間(それ以前に退去強制歴がある場合には10年間)は、日本に入国することはできなくなります(同法5条1項9号)。

2出国命令制度の概要

退去強制手続の例外として、外国人が摘発される前に、自主的に出頭して不法残留を申告した場合、出国命令制度の対象となって、収容令書は発付されず(したがって収容されず)、出国命令により帰国した後の日本への入国拒否期間も1年間に短縮されます(入管法55条の2、55条の3、5条1項9号二)。

出国命令制度の適用を受けられるのは、いったんは有効な在留資格を持っていた非正規滞在の場合であって、密航や偽造旅券を利用した不法入国・不法上陸の事案ではない場合であり、かつ、以前、退去強制を受けたり、出国命令による出国をしたことのないこと、入国後に窃盗罪等の所定の罪により懲役又は禁錮以上の刑に処せられた者でないこと、不法残留以外の退去強制事由に該当していないことなどの要件を満たしていることなどが必要です(同法24条の3各号)。

出国命令制度の適用があって、入国拒否期間が1年間となった場合であっても、他の上陸の要件を満たさない、典型的には在留資格該当性や基準省令該当性がない場合には、1年経過後であっても日本に入国することはできません。

3出国命令の適用がない場合

出国命令制度の適用を受けられない場合であっても、出入国在留管理局に自主的に出頭して、帰国する意思を表明した外国人に対しては、退去強制手続が開始され収容令書が発付されますが、その執行は行わないので身体拘束はされず、帰国の航空券を持って出頭する日時を指定するなどの取扱いを行う場合が通常です。

そのため、帰国する意思があるのなら自主的に入国管理局に出頭して帰国する方がよいでしょう。