労働関係

法律相談

外国人が失業した場合、失業給付を受けることはできないのでしょうか。
雇用保険料が給料から引かれていた場合と引かれていない場合、在留資格がある場合とない場合とで違いがありますか。

 

会社が雇用保険を払っていなくても失業給付を受ける方法はありますが、失業時に働くことのできる在留資格がなければ、給付を受けることはできません。

1求職者給付の基本手当

雇用保険法はかつては失業保険法という名称でした。

そして、この法律によって労働者は、失業した場合に一定の給付金を受け取ることができます。

もっとも、現在の雇用保険法に基づく給付は「失業等給付」といい、教育訓練給付や雇用継続給付のように就業状態で受け得る給付もあり、必ずしも失業した場合の給付に限られませんし、失業中の給付にも様々な種類のものがあります。

世間一般において「失業保険をもらう」というときの「失業保険」とは、失業等給付のうちの求職者給付の基本手当のことを指しています。

2雇用保険の被保険者

原則として労働者は、みな、雇用保険の被保険者となります。

例外は、短時間労働者、日雇労働者、季節労働者です(雇用保険法4条、6条。船員や一定の公務員も除外されていますが、それは他の保険があるため)。

さらに、日雇労働者については、一定の要件を満たすことによって日雇労働被保険者になります(同法43条)。

かつては、外国人については、在留資格の有無を問わず、原則として被保険者とはしない扱いがなされていましたが、現在では雇用関係の終了と同時に帰国することが明らかな者を除き、在留資格のいかんを問わず、原則として被保険者として取り扱われることになっています。

3雇用保険に加入する義務があるのに加入していなかった場合

前記の例外にあたらない限り、事業主は被保険者であることを届け出て、雇用保険に加入させなければなりません(ただし、農林、畜産、養蚕、水産業を営み従業員数が5人未満の個人事業だけは、任意加入で加入義務がありません。雇用保険法附則2条)。

そして、事業主と被保険者(労働者)とが保険料を折半して負担することになります。そのため賃金から雇用保険料が徴収されることになるのです。

このことは、労働者の意向のいかんにかかわらず、行われることであって、保険料を払いたくないから雇用保険に加入しないということは、事業主はもちろん、労働者もできないのです。

ところが、現実には前記の例外にあたらないにもかかわらず、雇用保険に加入していないということが往々にしてあります。特に外国人の場合には相当の割合に及んでいるといわれています。

その場合は、失業後であっても、厚生労働大臣(実際には公共職業安定所(ハローワーク))に、確認の請求というものを行うことによって、被保険者であったことを確認してもらい、最長2年間にさかのぼって雇用保険に加入することができます。

さらに、事業主が賃金から雇用保険料の被保険者負担分を天引きしていたにもかかわらず、雇用保険には加入していなかった場合には、その天引きを書類で証明できれば、2年より前にさかのぼって、加入することができます(雇用保険法14条2項2号、22条4項・5項)。

会社が倒産して、さかのぼって事業主側が保険料を納めることができなくても、失業給付を受けることの妨げにはなりません。

もっとも、前記の求職者給付の基本手当は、被保険者であった期間や離職の理由に応じて、支給される日数が細かく区分されています(同法22条、23条。ちなみに、23条にいう「特定受給資格者」というのは、倒産や解雇等による離職者(いわゆる会社都合の離職者))。

そのため、実際には5年以上(あるいは10年以上、さらには20年以上)、同一の事業主に雇用されていても、事業主が雇用保険に加入していなければ、さかのぼって加入しても、原則として最長2年間となり、支給日数に大きな差があります。

このような場合、事業主が雇用保険加入手続を怠ったことによって生じた退職者の損害を賠償する責任があるという判例【東京地判平成18・11・1労判926号等】があります。

4在留資格と雇用保険

前記のように、外国人も在留資格のいかんを問わず、原則として被保険者として取り扱われることになっており、賃金から雇用保険料が徴収されますが、離職の際に働くことができる在留資格を有していなければ、失業等給付を受けることはできないというのが実務の扱いです。

雇用保険法にいう「失業」とは、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいうと定義されているところ、働くことができる在留資格を有しなければ労働の能力があるとはいえないというのが実務の立場なのです。

例えば、重い病気に罹患して仕事が続けられなくなり離職することになった場合と異なり、労働の事実上の能力はあるわけですが、実務では、「失業」にあたらないものとされています。