労働関係

法律相談

車で通勤中に追突されました。事故が原因で後遺症が残り、働くことができなくなったのですが、何か公的な補償は受けられますか。私の母国は日本とはかなり物価が違うのですが、補償額に影響はありますか。

 

通勤災害による後遺症は労災保険の対象となります。補償の内容やその金額が被災労働者の国籍によって異なることはありません。

1通勤災害について

通勤災害とは、労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡をいいます(労災法7条1項2号)。

給付の対象は、通勤と相当因果関係にある「通勤に通常伴う危険の具体化」した災害です(昭和48・11・22基発第644号)。そこで、給付の請求をするには、当該災害が「通勤」に伴う災害といえるかどうかが問題となります。

通勤とは、労働者が就業に関し、①住居と就業の場所との間の往復、②就業の場所から他の就業の場所への移動、③①に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいいます(同2項)。ただし、移動自体が業務性を有する場合、その過程が事業主の支払いにあるような場合は、通勤災害ではなく、業務災害として扱われることもあります。

労働者が①から③の移動経路を逸脱又は移動を中断した場合には、経路をはずれた間、中断の間及びその後の移動は「通勤」にはあたらないとされます。しかし、経路から逸脱又は中断していても、それが「日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合」はその逸脱又は中断の間を除いて、「通勤」と認められ得る場合があります(同3項、同規則8条)。

合理的な経路及び方法とは、移動を行う場合に、一般に労働者が用いるものと認められる経路及び手段をいいます(前記昭和48·11·22基発第644号)。通常用いている経路及び方法に限定されず、合理的な代替経路及び手段も入るとされています。

2保険給付内容について

通勤災害に関する保険給付には、①療養給付、②休業給付、③障害給付、④遺族給付、⑤葬祭給付、⑥傷病年金、⑦介護給付があります(労災法21条)。

3保険給付額について

労災保険は、一律に定められた基準に従って給付されます。その金額は被災労働者の国籍によって異なるものではありません。

療養給付は現物支給が原則ですが(労災法13条2項)、出身国での治療等、日本国外での治療を受けた場合、診療の内容が妥当なものと認められた場合は支給の対象とされ、治療に要した費用が支給されます(同3項)。日本国外から労災保険を請求した場合、支給額は支給決定日における売りレートで換算した邦貨額となります(厚生労働省労働基準局労災補償部補償課編『海外派遣者労災補償制度の解説』労働行政<2003>150頁)。なお、アフターケア、義肢等補装具費の支給(車イスなど一部支給可能な場合もあり)、外科後処置、労災就学等援護費等の支援は日本国内に限られますので注意が必要です。