日常生活1

法律相談

私は10年前に在留資格「短期滞在」で来日した後、オーバーステイになり、日本で難民認定申請もしましたが認められず、既に退去強制令書が発付され、現在は仮放免許可を受けています。
私は、日本で知り合った、やはり在留資格のない同国人の女性との間に子どもを設けましたが、現在、私たち3人とも在留資格がありません。
子どもは6歳ですが、小学校に入学することはできるのでしょうか。

在留資格のない外国人の子どもであっても、公立の小・中学校、高校で学ぶことができます。

1在留資格と教育を受ける権利

日本人の子どもの場合、子どもに普通教育を受けさせることは親などの義務とされていますが(憲法26条、教育基本法4条、学校教育法16条)、外国人の子どもについては、日本の義務教育への就学義務はないと解されています。

しかしながら、日本が批准している経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下、「社会権規約」という)13条は、締約国に対し、教育についてすべての者の権利を認め、初等教育は無償かつ義務的なものとすること、中等教育についてすべての者に機会が与えられるものとすることを求めており、また、同じく日本が批准している児童の権利に関する条約(以下、「児童権利条約」という)28条も同様の内容を締約国に求めています。

これらを踏まえて、文部科学省は、従来より、外国人の子どもが公立の義務教育諸学校への就学を希望する場合には、国際人権規約等も踏まえて、日本人児童生徒と同様に無償で受け入れるという立場をとっています。

これは、在留資格がない外国人の子どもであっても同じであり、文部科学省は、国会の答弁等で、たびたび、このことを明言しています。

高校での就学についても、同じことがいえます。社会権規約13条、児童権利条約28条は、中等教育についても、「一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること」を求めており、実務上も、公立高校について、在留資格のない外国人生徒が就学する上での制限はありません。

2就学のための手続

日本人の児童生徒の場合、市区町村の教育委員会が、区域内に住所を有する学齢児童生徒について、住民基本台帳に基づいて学齢簿を作成し、就学予定者に対して入学期日の通知をします。

住民基本台帳に記載がない場合、実務では、個別に住民登録未済者就学申請書の提出があれば、教育委員会が住所の認定をして、その上で入学を認めています。

外国人の児童生徒の場合、1991年から、就学年齢に達した外国人児童生徒の保護者に対しては、外国人登録で住所を確認し、在留資格にかかわりなく、就学案内を通知する取扱いがされていました(平成3・1・30文部省初等中等教育局長通知文初高69号)。

2012年7月9日施行の法改正により、外国人登録制度が廃止され、一定の在留資格を持つ外国人については住民基本台帳法が適用され、住民票が作成されることになった一方、在留資格のない外国人は公的な登録の対象外となりました。

現在、外国人の児童生徒に対する就学案内は、原則として住民基本台帳に基づいて行われています。

しかし、これは、住民票がなければ就学できない、ということではなく、一定の信頼ができる書類により住所確認等ができる場合には、それによって就学手続を取ることも可能です。

外国人登録制度の廃止にあたって、文部科学省は、外国人の児童生徒については、住民基本台帳等の情報に基づいて学齢簿に準じるものを作成するなど、適正な情報管理に努めることを指示する一方、出入国在留管理局から市町村に通知される仮放免された者の情報の中に、就学年齢の外国人の子どもが含まれる場合は、各担当部局と連携の上、必要に応じて就学案内等を行うこと、在留カードなどの提示がない場合であっても、一定の信頼が得られると判断できる書類により、居住地等の確認を行うなど、柔軟な対応を行うことを指示しています(平成24・7・5文部科学省初等中等教育局長通知文科初第388号)。

文部科学省は、2012年の法改正にあたって、義務教育に関して、在留資格の有無を問わず無償で受け入れるという同省がとってきた立場が変わるものではないことを明言しています。

法的知識のない地方自治体担当者により、在留資格がない外国人の児童が就学拒否されたという事例も時折ありますが、正しい知識を持って申し入れをすることにより解決が可能です。