法律相談2

法律相談

 

私はA国人ですが、日本人の夫と結婚し、日本で生活していました。しかし、夫の暴力がひどいので、現在は友人宅に避難しています。夫には居場所を知られたくないので、住民登録は変えていません。仕事が見つかりませんが、生活保護を受けることはできますか。もうすぐ在留期限が来てしまいますが、どうしたらよいでしょうか。

「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」又は「永住者」の在留資格がある外国人は生活保護を受給できます。
それ以外の在留資格を有する外国人や在留資格のない外国人は、原則として生活保護を受給することができませんが、事情により生活保護の受給が認められることもあります。
「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格については、離婚についての調停、訴訟継続中の期間の更新が認められ、また、離婚成立前であっても、定住者への変更が認められる場合があります。

また、DVのために夫から身を隠しているような場合には、夫と別居していたり、実際の住居地を届け出していなくても、在留資格取消制度(入管法22条の4第1項)の対象にはなりません。

1DV被害とDV防止法

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(以下、「DV防止法」という)は、保護の対象となる者の国籍や在留資格の有無を問題としていません。

したがって、DV防止法上の保護は、日本国籍や在留資格の有無を問わず、理論上は保護を受けられることになります。

しかし、実際には、保護命令の申立ての際の通訳の問題など、外国人にとって保護が受けにくい状況が存在するので、早めに法テラスや弁護士会などの外国人相談を利用して、弁護士への相談を促すとよいでしょう。

在留資格のない外国人でも、日本弁護士連合会(日弁連)の委託事業により法律扶助を受けることが可能です。法律扶助を受ければ、通訳費用等の一部援助も受けられます。

2DV被害と生活保護

「日本人の配偶者等」など、1年以上の在留資格を有していれば、生活保護受給の可能性があります。

問題は、DV被害者の場合、夫に現住所を知られたくないので住民登録上の住所を変更できないところ、生活保護の管轄事務所は、住民登録上の住所を管轄する事務所とされていることです。

ただし、柔軟に対応してくれる福祉事務所もありますので、まずはあきらめずに相談することが必要です。

他方、在留資格のない外国人の場合、原則として生活保護を受給することはできません。

しかし、日本人の夫との間の子を監護養育しているなど、離婚後も在留を特別に許可されるような事情がある場合には、極めて例外的ではありますが、生活保護の受給が認められることもあります。

なお、在留資格を有しない外国人が福祉事務所等に相談に行った場合、入管法62条2項が定める通報義務により、福祉事務所等から入国管理局に通報されることが懸念されます。

しかしながら、法務省入国管理局長通知平成15・11・17管総1671号は、入管法62条2項に基づく通報義務の解釈について、「・・・・・・その通報義務を履行すると当該行政機関に課せられている行政目的が達成できないような例外的な場合には、当該行政機関において通報義務により守られるべき利益と各官署の職務の遂行という公益を比較衡量して、通報するかどうかを個別に判断することも可能である。」としています。

実際にも、DV被害者が相談に来た場合に福祉事務所等が通報を行うことは、ほとんど考えられません。

3DV被害と在留資格

(1)現に「日本人の配偶者等」として在留している場合

【最判平成14・10・17民集56巻8号1823頁】は、日本人との間の婚姻関係が法律上存続している外国人であっても、婚姻関係が社会生活上の実質的基礎を失っている場合には、その者の活動は日本人の配偶者としての活動とはいえないとして、「日本人の配偶者等」としての在留資格は認められないとしました。

しかしながら、実務上、DV被害者が夫と別居しながら離婚に向けての手続(調停、訴訟など)を行っている場合には、夫が身元保証人となっていなくても、在留期間の更新が認められる可能性があります。

法務省出入国在留管理局長は、「「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」及び『配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策に関する基本的な方針」に係る在留審査及び退去強制手続に関する措置について」という通達を2008年発表しました(平成20・7・10法務省管総2323号)。

その中で、配偶者からの暴力を受け、配偶者の協力を得ることが困難であるとして立証資料等の提出が不十分なまま在留期間更新許可申請又は在留資格変更許可申請があったときは、その旨を付記した上で本省に請訓するとしています。

また、日本人の夫との間の子を監護養育している場合や婚姻期間が相当長期に及んでいる場合には、離婚が成立する前であっても、「定住者」への在留資格変更が許可される可能性もあります。

上記通達の趣旨から、DVの被害者であると立証できた場合には、婚姻期間が短い場合でも「定住者」の在留資格が認められることもあります。

更新申請であっても、変更申請であっても、現にシェルターなどに避難しており、稼働できず、生活保護を受給している場合であっても、それを理由に不許可となることはありません。

なお、2009年の入管法改正によって、「「日本人の配偶者」又は「永住者の配偶者」として在留資格を有する外国人が、配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6か月以上行わないこと」が在留資格取消事由として追加されました(入管法22条の4第1項7号)。

しかしながら、同号は、配偶者としての活動を行わないことにつき正当な理由がある場合を除外しているところ、DVを理由として一時的に避難又は保護を必要としているようなケースは、「正当な理由」があるものと解されています。

また、中長期在留者が転居した場合には、90日以内に法務大臣に対し新しい住居地を届け出なければならず、これを行わない場合も取消制度の対象となります。

しかしながら、DVを理由として避難又は保護を必要としている場合には、やはり届出を行わないことに「正当な理由」があるものとされ、在留資格取消制度の対象とはなりません。

(2)現在在留資格を有していない場合

現に在留資格を有していない場合であっても、日本人の夫との間の子を監護養育しているなどの事情がある場合には、在留特別許可を取得できる可能性があります。

それ以外の場合は、最終的には退去強制になる可能性が高いといわざるを得ません。

ただし、現に離婚の調停や訴訟が係属しているような場合には、逃亡のおそれがない限り、仮放免を許可され、離婚が成立した段階で退去強制(実務的には自費出国)となることが多いでしょう。

前記通達も、DV被害者の場合は、原則として仮放免を許可した上で退去強制手続を進めるものとしています。

(3)旅券の不所持

在留期間の更新や資格の変更の申請を行う場合、本来であれば地方出入国在留管理局に対し旅券の提示が必要となります。しかし、DV被害者の場合、妻が出ていくことを防ぐため、夫が旅券を取り上げてしまっていることもよくあります。

ところで、前記通達は、「DV被害者に対して在留期間更新又は在留資格変更の許可をするに際し、当該DV被害者が配偶者からの暴力に起因して旅券を所持していないときは、在留資格証明書を交付する。」としています。

申請の際にも、DVが原因で旅券を所持していないことを説明する文書を提出すれば、旅券がないことは問題とならず、更新や変更の申請の受理票を交付されます。

したがって、この申請受理票を所持していたほうがいいでしょう。

形式上は在留期間を過していても、申請中であれば不法残留にはならないため、万一職務質問を受けた場合などは、受理票を示すことにより、申請中であることを明らかにすることができます。