法律相談1

法律相談

私は非正規滞在ですが日本で働いています。同国人で「日本人の配偶者等」の在留資格を持つ男から10日で1割の利息で金を借りています。返済が滞ると昼夜を問わず脅かされます。でも日本で働き続けたいです。どうしたらよいですか。

法律に違反する高金利の借金は支払いを拒否できます。刑事告訴も可能です。ただし、刑事告訴をした後に日本で働き続けるのは事実上難しいでしょう。

1消費者契約の準拠法

日本では、消費者契約について、消費者保護のためにその成立や効力について様々な強行法規を設けています。また、消費者保護のために、契約の方式についても様々な規定を設けています。

そこで、法適用通則法は、消費者契約について特則(同法11条)を設けています。

①当事者が準拠法を選択しなかった場合、消費者契約の成立・効力方式の準拠法は消費者の常居所地法となります。

②当事者が選択した準拠法が消費者の常居所地法以外の法である場合であっても、消費者がその常居所地法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を事業者に対し表示したときは、当該消費者契約の成立・効力に関しその強行規定の定める事項については、その強行規定をも適用すると定めています。

③さらに、消費者契約の方式についても、一般の契約と異なり、消費者は、行為地法等によらず、専らその常居所地法を適用すべき旨の意思を事業者に対して表示することができるものとされています。

2消費者・事業者の定義

法適用通則法11条1項によると、消費者とは、事業として、又は事業のために契約の当事者となる場合を除いた個人と定義されており、事業者とは法人その他の社団又は財団及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人と定義されています。

そして、このような定義の下での消費者と事業者との間の契約が消費者契約と定義されているのです。

そして、事業というのは、営利目的に限らず、自己の危険と計算によって、一定の目的をもって同種の行為を反復継続的に行うことをいい、反復継続が予定されているなら、最初の行為も事業として行われたことになるとされています。

利息をとって金を貸すという行為を反復継続して行う予定があれば、当然、ここでいう「事業」にあたります。

3外国人の「常居所」

単なる金の貸し借りについて、準拠法の選択を明示的に行うことはほとんどないでしょう。

双方が日本に生活の基盤を置いて生活している場合には、日本法を選択する黙示の意思を推定すべきであると考えます。

また、常居所というのは、人が常時居住する場所であって、単なる居所と異なり、相当長期間にわたって居住する場所であるとする国際私法上の概念であるため、在留資格がなくとも、長期滞在をしていれば、日本を常居所地といってよいと考えます。

もっとも、常居所地の認定について、日本在住の外国人については、永住目的又はこれに類する目的の場合は、1年の滞在と登録で足りる一方、外交、公用、短期滞在の在留資格を持って滞在する場合及び不法滞在の場合は日本に常居所を認めず、その他の目的の滞在については、原則として5年の滞在と登録を常居所認定の要件としています。

しかし、これは、戸籍実務の取扱いであって、窓口での形式的審査を原則とし、全国一律の取扱いをすることが必要であることから、通達によって認定基準を画一的に定めているため、上記の解釈には影響しないといってよいでしょう。

4貸金業を対象とする強行規定

消費者契約に関する強行法規には消費者契約法、特定商取引法など様々な法律がありますが、貸金業を対象とする強行法規としては、利息制限法、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(以下、「出資法」という)や貸金業法などがあります。

そこでは、金利の制限など、様々な規制が定められています。そして、その規制に反した場合に、罰則が設けられていることもあります。

したがって、事業者でない借主が日本を常居所地としている限りは、これらの強行規定の適用を主張することができます。

特に出資法は、金銭の貸付けを行う者が、年109.5%を超える割合による利息の契約をしたときや、業として金銭の貸付けを行う場合において、年20%を超える割合による利息の契約をしたときは、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定めており(出資法5条)、これは日本の公序であると考えられます。

そして、法適用通則法42条は、「外国法によるべき場合において、その規定の適用が公の秩序又は善良の風俗に反するときは、これを適用しない。」と定めているので、たとえ、借主の常居所地が日本であるということができなくとも、出資法違反の利息の定めは無効というべきであると考えます。

5現実の対応策

出資法違反の利息の定めは無効なため、これまでに支払った利息は元本に充当され、払いすぎていれば逆に過払金として返還を求めることもできます。

さらに、10日で1割の利息をとるのは暴利行為ですから、元本の返還義務もありません。

したがって、本事例では、返済の必要はありません。

さらに、前記のように出資法違反の高利貸付けは犯罪であり、刑事告訴をすることもできます。

ただし、刑事告訴した場合には被害者として警察に出頭しなければならないので、在留資格がなければ帰国せざるを得ないでしょう。

どうしても日本で働き続けたいというのであれば、過払金の請求やその請求権を基にした振込口座の差押え・仮差押えといった民事的な手段によるほかありません。