日常生活1

日本の「教育費用の援助制度」についてご説明します。

法律相談

高校1年生と中学1年生の子どもをかかえる外国人の夫婦です。もともと家計は厳しかったのですが、先日、夫が失業し、さらに生活が苦しくなりました。毎月の授業料や教材費にも事欠く状態ですが、子どもたちは大学進学を希望しており、何とかかなえてあげたいと思います。教育費について援助してもらえる制度は何かないでしょうか。

義務教育の学齢にある子どもの保護者が経済的に困窮している場合は、就学援助を受けることができます。
また、高校の授業料については、高等学校就学支援金を利用することができます。

1就学援助

就学援助とは、義務教育の学齢にある児童生徒の保護者が、経済的に困窮し、子どもを就学させることが困難と認められる場合に、市区町村が就学に要する諸経費を援助する制度です(学校教育法19条)。

対象となるのは、生活保護を受けている場合や、生活保護世帯に準ずる程度に困窮している場合です。

就学援助は、在留資格の有無にかかわらず受けることができます。学校教育法等の法令には、就学援助について、日本国籍を持つことや在留資格があることを支給の要件とする規定はなく、また、文部科学省は、学齢期の外国人の子どもが公立の義務教育諸学校へ就学を希望する場合には、教科書の無償給与及び就学援助を含め、日本人と同一の教育を受ける機会を保障するものと明言しており、在留資格の有無による区別はありません。

就学援助によって支給されるのは、学用品費、体育実技用具費、新入学児童生徒学用品費等、通学用品費、通学費、修学旅行費、校外活動費、学校給食費などです。

申請方法や支給内容など、詳細については、子どもの在籍する小中学校に問い合わせてください。

2児童手当・児童扶養手当

児童手当は、児童手当法に基づき、中学校修了までの国内に住所を有する児童を養育している人に支給される手当です。

また、児童扶養手当は、児童扶養手当法に基づき、父母が離婚するなどして、父又は母と生活を同じくしていない児童のために支給される手当で、支給の要件を満たす場合、当該児童が18歳に達する年度まで(一定の障害がある場合は20歳になる前まで)支給されます。

これらはいずれも、児童と養育者の双方が日本に住んでいることが要件になっており、例えば、親は日本で働き、子どもは本国の学校に通っているケースは支給の対象になりません。ただし、児童手当については、子どもが留学中の場合も一定の要件を満たす場合に支給の対象になることがあります。

また、在留資格のない外国人については、日本国内に住所を有することが支給要件となっていることとの関係で、厚生省児童家庭局児童手当課長通知(昭和56・11・25児手33号)や厚生省児童家庭局企画課長通知(昭和56・11・25児企41号)を根拠に、支給が否定されることが多いようです。

ただし、住所の有無と在留資格の有無はイコールではないので(国民健康保険法に関する【最判平成16・1・15判夕1145号120頁】参照)、例えば、在留特別許可の見込みが十分にあり、既に出入国在留管理局で手続をしているようなケースについては、地方自治体と交渉をしてみてもよいかもしれません。

3高等学校等就学支援金

高等学校等就学支援金は、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の実質的な機会均等に寄与することを目的として、国公私立を問わず、高校等に通う所得要件等を満たす世帯に対し、授業料にあてるため、国費により高等学校就学支援金を支給するという制度です。

保護者に直接給付されるのではなく、国から各高等学校に授業料相当額を給付するという方式がとられます。

給付の対象に国籍要件はなく、専門学校などの専修学校、あるいは外国人学校を含む各種学校も対象となり得ます。

専修学校及び各種学校について、どの学校の生徒を対象にするかは、高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則1条1項で定められていますが、各種学校のうち外国人学校については、文部科学大臣が指定したものに限られています。

外国人学校のうち、朝鮮学校については、制度発足当時、拉致問題と関連付けて反対する声が上がり、上記の指定から除外されています。このような扱いは、朝鮮学校に在学する生徒の学習権を侵害し、平等原則に違反するおそれが大きいと批判されています。

4各種奨学金

その他、就学を経済的に支援する制度としては、各種の奨学金があります。

高校生を対象とするものとしては、都道府県の高等学校等奨学金事業があり、大学、短大、高等専門学校、専修学校の専門課程の学生については、独立行政法人日本学生支援機構の奨学金があります。

独立行政法人日本学生支援機構の奨学金は、国内で返還することが予定されていることから、外国人については、将来も日本で生活することが予定されている人だけが対象とされており、奨学規程2条で、外国人については特別永住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者のうち永住者などに準ずると認められた者に奨学生の資格を認めるとされているので、入管法別表第1の在留資格の子どもや、在留資格のない外国人の子どもの利用は難しいのが現状です。

また、この他にも、学校、地方自治体、私的な団体等の奨学金制度があり、支給を受けるための条件はそれぞれ異なります。