家事事件

法律相談

私(フィリピン国籍)は、日本人男性との間に子(フィリピン国籍)をもうけましたが、結婚はしていません。子どもはフィリピンで生まれ、子の出生証明書には父親として男性の氏名が記載され、認知宣誓供述書にも父親の署名があります。これらの証明書があれば日本でも父子関係があると認められるでしょうか。

 

日本でも父子関係があると認められるためには、日本での認知手続が必要となります。

1認知制度(事実主義と認知主義)

フィリピン家族法では、親子関係は出生により生じます。これを出生の事実により親子関係が生じるという意味で、事実主義と言います。つまり、フィリピンには認知制度がありません。

これに対し、日本法における父子関係は、認知という父の意思表示により生じますので、認知主義といいます。

日本の認知には、父が自らの意思で認知届をする任意認知と、子又は子の法定代理人である母の方から認知の調停や裁判を提起することで認知が生じる審判又は裁判による認知(強制認知)があります。

2親子関係に関する準拠法

本事例の場合、フィリピンでは出生の事実により父子関係が成立していますが、日本での父子関係については法適用通則法29条1項前段により、子の出生の当時の父の本国法である日本民法(認知主義)が適用されますので、日本で父子関係を成立させるためには、日本法による認知が必要です。

また、子の本国法により、その子又は第三者の承諾又は同意が認知の要件と定められている場合には、その要件を備えることも必要ですが、前記のとおり、本事例では子の本国法であるフィリピン法には認知制度がないことから、このような要件はありません。

3日本での認知手続

日本人父の協力が得られる場合には、認知届を市町村長に届け出ることで父子関係が成立します。

日本人父がフィリピンの方式で子を認知したとする報告的届出は認められず、認知届によって初めて父子関係が創設されます。

日本人父の協力が得られない場合には、日本人父の住所地を管轄する家庭裁判所に認知を求める調停を申し立てます。

調停で、日本人父が子を自分の子であると認め、家庭裁判所がこれを正当と認める場合には、合意に相当する審判がなされます(家事事件手続法277条)。

日本人父が調停期日に出頭しなかったり、父子関係を争ったりする場合には、調停は不成立となり、認知を求める訴えを提起することになります。

任意認知は、調停や裁判による認知よりも簡易ですが、認知後に子の日本国籍取得の届け出を予定している場合には、調停又は裁判による認知の場合よりも法務大臣に提出する書類が多くなり、国籍取得の届け出についても、日本人父の協力が必要となります。

そのため日本人父が父子関係を認めている場合でも、国籍取得についての協力を得ることが困難な事情があるときには、調停を申し立てることを検討したほうがよい事案もあります。