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厚生年金保険の加入期間が6か月以上であり、日本国籍を有しない外国籍の方が帰国した場合、加入期間等に応じた「脱退一時金」の支給を請求できます。国民年金についても同様の制度があります。

 

法律相談

私(外国人)は、日本の会社で2年間仕事をしており、厚生年金保険に加入していましたが、退職し帰国することになりました。これまで支払ってきた厚生年金に対して保障はありますか。

厚生年金保険の加入期間が6か月以上であり、日本国籍を有しない外国籍の方が帰国した場合、加入期間等に応じた「脱退一時金」の支給を請求できます。国民年金についても同様の制度があります。

1脱退一時金制度とは

厚生年金の被保険者期間が6か月以上あり、年金(障害手当金を含む)の受給資格を満たしていない日本国籍を有しない人(国民年金の被保険者ではない人)が、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に請求を行えば脱退一時金が支給されます。

2支給要件(厚生年金保険法附則29条)

脱退一時金が支給される要件は、厚生年金被保険者期間が6か月以上であること、受給者が日本国籍を有していないこと、既に年金受給権を有していない、若しくは障害手当金を受給されていないことが挙げられます。

3脱退一時金裁定請求の手続

脱退一時金の請求は、請求書を社会保険事務所等から帰国前に入手した上で、出国後2年以内に日本年金機構に対して請求書と必要書類を送付する手続によります(電子申請可)。

また、帰国前であっても、転出届を市区町村に提出すれば、住民票転出(予定)日以降に提出手続可能です。

この場合、添付書類として、日本国外に転出予定である者について記載された住民票の写し、住民票の除票等の転出届を提出したことが確認できる手続が必要となります。

請求手続完了後に、各国の通貨に換算されて、指定した金融機関の口座に送金されます。

なお、脱退一時金は支給額の20.42%が所得税として源泉徴収されます。そこで、退職後帰国する際、日本の最終住所地又は居所地の税務署に、退職一時金と併せて確定申告を行うことで、税の超過支払があった場合には還付を受けることができます。

4支給額

脱退一時金の金額は、被保険者であった期間に応じて、平均標準報酬額×支給率で算出されます(厚生年金保険法附則29条3項)。

5社会保障協定による「年金加入期間の通算」制度

なお、脱退一時金とは別に、国家間の社会保障協定に基づく「年金加入期間の通算」の制度があります。

この制度は、日本と相手国との年金加入期間を相互に通算し、年金受給権を獲得できるようにする制度です。

2022年10月現在で、日本と年金加入期間の通算を内容とする保障協定を締結し、かつ発効済みの国は、ドイツ、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルク、フィリピン、スロバキア、フィンランド、スウェーデンの各国です。

この社会保障協定によって年金加入期間の通算が認められる相手国の外国人が、帰国後脱退一時金を受け取ると、その期間は、協定において年金加入期間として通算できなくなるので、金額の計算をした上、受給権の選択をする必要があります。