日常生活1

法律相談

私は、X国の国籍を有しており、日本の企業に勤務して10年になります。X国内でも所得があったのですが、この所得は日本で課税されますか。
X国でも税金を納める必要があるのですが、その分を日本の税額から差し引くことはできますか。

X国内の所得についても、日本で納税義務を負います。日本とX国で二重課税になる場合、一定額を差し引くことができる場合があります。

1相談者の納税義務者区分

課税の範囲は納税義務者の区分によって異なるので、まずはいずれの納税義務者区分に該当するのかを確認する必要があります。

(1)住所を有することの推定

所得税法施行令14条は、次のような場合に国内に住所を有すると推定する規定を置いています。

①国内に継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有すること

②日本の国籍を有し、かつ、国内に生計を一にする配偶者その他の親族を有することその他職業及び資産の有無等の状況に照らし、国内に継続して1年以上居住するものと推測するに足りる事実があること

③上記①②により国内に住所を有する者と推定される個人と生計を一にする配偶者その他その者の扶養する親族が国内に居住する場合には、これらの親族

(2)永住者の課税範囲

相談者は、住所を有すると推定され、その期間が5年を超えるため、「居住者」のうちの「永住者」にあたるでしょう。

「永住者」は、すべての所得について所得税の納付義務を負います(所得税法5条1項、7条1項1号)。

したがって、相談者は、X国内の所得も日本で課税されることになります。

2二重課税の危険と外国税額控除

居住者は、国内源泉所得(所得税法161条)と国外で生じた所得(国外所得)について日本で課税されますが、国外所得が外国の法令で所得税に相当する租税(以下、「外国所得税」という)の課税対象とされる場合、日本とその外国で二重に所得税が課税される場合が生じることになります。

この国際的な二重課税を回避するために、所得税法95条は、外国政府に納付した所得税の税額のうち一定額を、日本での所得税の税額から控除する外国税額控除と呼ばれる方法を採用しています。

居住者は、各年において外国所得税を納付することとなる場合には、その年分の所得税の額から、その年において生じた国外源泉所得に対応する税額を限度として、その外国所得税の額を控除することができます。

したがって、相談者は一定額を日本で納付すべき所得税額から控除することができます。

3外国税額控除の繰越控除

外国税額控除は、外国所得税を納付することとなる年においてその年分の所得税額から一定額を差し引くことができるのですが、国外所得が生じた年と外国所得税を納付することとなる年が一致するとは限りません。

そのような国外所得の発生年と外国所得税の納付年とのズレを調整するため、外国所得税の額と控除限度額との差額を翌年以降3年間繰り越すことができます。

4外国税額控除を受けるための手続

外国税額控除を受けるためには、確定申告書に控除を受ける金額の記載をし、かつ、外国税額控除に関する明細書、外国所得税を課されたことを証する書類及び国外所得総額の計算に関する明細書などを添付する必要があります。

5その他

その他詳細については、税理士等の税務の専門家に相談することをお勧めします。