結婚の方式
日本の「通則法」第24条第2項及び第3項では、どこの国の結婚の方式で行うかを決めています。
国際結婚の方法は自分の国か相手の国か、あるいは結婚する場所の国の法律で行うかは自由ですが、日本で結婚する場合は日本の方式、つまり日本の役所に届け出る方式で行われなくてはなりません。
結婚の手続きは、その国々の文化、習慣、宗教などによって様々な方式がありますが、多くの国で行われているのは大体「民事婚」と「宗教婚」、そして日本人同士が外国の自国の領事館等で行う「領事婚」という方式があります。
民事婚
「民事婚」には、日本のように役所などへ届けるなど、結婚の事実を市区町村や他の公の結婚登録機関へ登録公示する「届出婚」や、役所などで結婚の儀式等をおこなう「儀式婚」などがあります。
宗教婚
また、フィリピン、ギリシャ、イランなどで挙行されている教会での宗教儀式によって結婚の手続きを行う「宗教婚」は、カソリック系、ロシア正教諸国やイスラーム諸国などが多く、このように世界にはさまざまな結婚方式があります。
(1)日本で、日本人と外国人との結婚
①最初に日本の役所へ届出をする場合
国際結婚の当事者の一方が日本人で、日本で結婚する場合、
まず、日本の市町村役場で「婚姻届」に必要記載事項を書いたあと、
基本的には、
日本人は「戸籍謄本」、
外国人は本人の「パスポート」、「婚姻要件具備証明書」(独身証明書)、
アメリカ人などの「宣誓書」、
韓国籍の「家族関係証明書」や「婚姻証明書」、
日本国内で相手国大使館や領事館で結婚手続きを行なった人びとの「婚姻証明書」、相手国の公証人による「公証人証書」などを
添付して届出をします。
受理伺い
役所では、提出された書類が要件を満たしていれば、「婚姻届」はその場で受理されますが、法的要件を満たしていないと判断されると、書類をいったん役所側で預かり、市区町村役場の上級機関の各地方法務局へ「受理伺い」が出されて、法務省の判断を待ちますので、日本人の戸籍謄本に結婚の事実の記載がなされるまでにはかなり時間がかかります。
「受理伺い」の場合は、届出後2~3カ月前後に、法務局より出頭要請が出され、2人が法務局に呼ばれてあらためて事情説明を行なうことになりますので、必要書類は常に用意しておくとよいでしょう。
なお、外国文書にはすべて日本語訳が必要です。
婚姻成立後の戸籍と姓
結婚が成立したら、日本人の場合、親の戸籍から独立して別の戸籍がつくられますが、外国人との婚姻事項は、日本人当事者の戸籍謄本上の「身分事項」にのみ記載されます。
さらに、1985年の「国籍法」と「戸籍法」の一部改正により、日本人と外国人との結婚による結婚後の「姓」は、結婚の日から6カ月以内に役所に届け出ることによって、家庭裁判所の許可なく、「戸籍の氏」を変更することができるようになりました。
そして、たとえ6カ月の法定期限を超えても、住所地の家庭裁判所へ「氏の変更の申立て」を行なえばよいのです。
夫婦別姓を望むカップルは、「婚姻届」だけを提出すればよく、現在、日本で話題になっている「夫婦別姓問題」は、国際結婚に関しては昔から常識なことです。
相手国の日本での大使館、領事館などへの届出
結婚の当事者は、日本の役所に届出を出すとともに、相手国の日本での大使館、領事館、その他の公的機関に届け出る必要があります。そうすることで、相手の国でもその結婚が有効になるからです(「跛行婚の回避」)。
②最初に日本で相手国の公的機関(駐日領事館等)へ届出をする場合
日本での相手国の大使館または領事館(駐日大使館、領事館)へ指摘された書類を提出したり、領事の前で宣誓したりして、まず相手国側での結婚を成立させます。
この場合、3カ月以内に相手国の公的機関が発行した「婚姻証明書」と、その日本語訳を市区町村役場へ提出して、日本における婚姻をも有効に成立させます。
「通則法」第24条第2項及び第3項の規定どおり、日本在住の日本人と外国人の結婚は、日本の方式で結婚しなければなりませんから、日本の市区町村への「婚姻届」は創設的届出となります。
しかし、相手国によっては、日本での「婚姻届」が正式に受理されたあとでないと、当領事館などで認められなかったりするので、それぞれの相手国の公的機関への事前確認が必要です。
(2)外国で、日本人と外国人との結婚
日本人が外国で結婚する場合、日本人に関する結婚の方式は、日本の「通則法」第24条第2項によって、「婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による」と規定されており、次の2つの方法があります。
その1つは、結婚相手の国の法律で決められている場合であり、もう1つは相手国以外で、現在2人がいる国の相手国領事館で結婚する方法です。
基本的には、それぞれ各国が規定する法律どおりの方法(届出婚、宗教婚など)で結婚しますが、主な書類は、「婚姻要件具備証明書」(日本の本籍地を管轄する地方法務局が発行する、婚姻できる旨の証明書)と本人のスポートが基本です。
その他、国によっては本人の「納税証明書」「在職証明書」、「健康診断書」などの日本の公的機関が発行した書類を要求されることがありますので、相手国領事館などに事前に確認をして渡航しましょう。
婚姻成立後の手続
婚姻成立後は、それぞれの国の公的機関発行の「婚姻証明書」を受け取り、その書類をその国の在外公館(在外の日本の領事館など)に直接に届けるか、または日本の本籍地へ郵送するか、いずれにせよ、婚姻の正式な成立後3カ月以内に届出をしなければなりません(戸籍法第74条)。
これに違反すると3万円以下の過料を取られることがありますのでご注意ください(戸籍法120条)。
在外の日本領事館などでは、この届出があると届出者の日本の本籍地へ郵送し、その戸籍への記載の旨の指示をすると、届出者に新しい戸籍が作られます。
時間がない場合は、本人が帰国した後、本人が直接本籍地の市区町村役場へ届け出るか郵送しても結構です。
(3)日本で、外国人同士の結婚
日本に在住している外国人同士は、自分達の結婚はどこで行なっても自由ですが、日本で結婚する場合は、日本の戸籍法第25条第2項で、「外国人に関する届出は、届出人の所在地でこれをしなければならない」としており、「本籍」を持たない外国人は、自分の所在地で婚姻届をしなければなりません。
しかし、外国人は日本では戸籍がありませんので、日本人のように「婚姻届」を提出するのではなく、「婚姻事項記載届」という届出方方法になります。
届出時の添付書類は、本人たちのパスポートと本国での「姻要件具備証明書」などです。