Q.
外国人社員で、この度、海外にある親会社からリストリクテッド・ストック等の株式報酬を受け取った者がいます。
どのような申告をしたらよろしいのでしょうか。
外国人社員で、外国にある親会社から、ストック・オプションや、りストリクテッド・ストックなどの株式報酬を受け取る者がいますが、主な株式報酬及び課税関係は、次のとおりです。
1. Stock Option(ストック・オプション)
「税制非適格ストック・オプション」
株式会社が、一定の期間に,一定の価額(権利行使価額)で,一定の株数の自社株を購入する権利を与える制度。
制度の流れ
Grant(付与)
→Vesting period(権利行使制限期間)
→Exercise(権利行使)
→Sale(売却・譲渡)
課税関係
権利行使時に給与所得課税。
譲渡時に株式譲渡所得課税。
日本国内の子会社からもらう給与と合算した確定申告が必要。
労働社会保険の取扱い
「ストック・オプション制度では、権利付与を受けた労働者が権利行使を行うか否か、また権利行使するとした場合において、その時期や株式売却時期をいつにするかを労働者が決定するものとしていることから、この制度から得られる利益は、それが発生する時期及び額ともに労働者の判断に委ねられているため、労働の対償ではなく、労働基準法第11条の賃金には当たらないものである。」(平成9年6月1日付基発第412号)よって、ストック・オプション制度から得られる利益は、社会保険料の算定対象に含まれない。
2. Restricted Stock/RS
(リストリクテッド・ストック/譲渡制限株式)
株式会社が、一定の期間経過後に一括して、あるいは何年かに分けて、自社株を無償で交付する制度。
現物株式が付与されるため、制度内容によっては、制限期間中であっても、付与された従業員等は、議決権の行使や配当金を受ける権利を有することがある。
ストック・オプションと異なり、権利行使しなくても期間が経過すれば、利益を得ることができる。
退職すると権利を失う。
また、ストック・オプションと異なり行使価額はゼロ。
制度の流れ
Grant(付与)
→Vesting period(制限期間)
Dividend(配当)
→Vest(制限期間解除)
Dividend(配当)
→Sale(売却・譲渡)
3. Restricted StockUnit/RSU
(リストリクテッド・ストック・ユニット/制限株式ユニット)
株式会社が、期間経過後に一括して、あるいは何年かに分けて、株式と等価のユニット(交換単位権)を無償で交付する制度。
ユニットは現物株式ではないので、直接の議決権はなく、配当相当額のユニットを受け取ることが多い。
リストリクテッドストック(RS)とリストリクテッド・ストック・ユニット(RSU)は、良く似た制度ではあるが、RSは譲渡制限付きの株式現物の交付を受けるのに対して、RSUは株式現物ではなく、株式と等価のユニットを取得するものである。
制度の流れ
Grant(付与)
→Vesting period(制限期間)
Deemed dividend(配当相当手当)
→Vest(制限期間解除)
Deemed dividend(配当相当手当)
→Convert(転換/ストック・ユニットを株に変えることができる期間)
→Sale(売却・譲渡)
課税関係
制限期間経過時(制限期間解除時)の時価に給与所得課税される。
配当金相当額のユニットも制限期間経過時の時価で給与所得課税される。
日本国内の子会社からもらう給与と合算した確定申告が必要。
配当相当金額は、給与所得として課税される。
4. Employee Stock Purchase Plan/ESPP
(エンプロイー・ストック・パーチェイス・プラン/従業員持株購入制度)
自社株を割引(通常15%引き)で購入できる制度。
外国法人の国内子会社が、その役員使用人の税引き後の給与から、毎月、役員・使用人が自ら定めた金額又は一定の率を基本給等に乗じて計算した金額を控除する。
そしてこの金額を外国法人経由で、外国法人と外国証券会社との契約に基づいて開設された役員・使用人の外国証券会社の個人口座に移動する。
役員・使用人は毎年一定時期に、自らの個人口座に積み立てられた資金を基に、外国法人の株式を市場価格に対して割り引かれた金額で購入できる。
アメリカ企業に多くみられる。
制度の流れ
ESPP deduction(給与控除)
→Pooling(積み立て)
→Discount purchase(割引購入)
→Sale(売却)
課税関係
・15%相当額を内国法人が支払った場合
→給与所得として源泉徴収
・15%相当額を外国法人が支払った場合
→株の時価と給与天引額の差額を確定申告(総合課税)
・株式売却時の時価と購入時の株価との差額が株式譲渡所得として課税。
5. Performance Share
(パフォーマンス・シェア)
役員使用人の勤務成績に応じて、一定数の株式が当初付与(Initial grant)され、2~3年の制限期間(Vesting period)経過後に、制限期間中(Vesting period)の勤務成績に応じた株数が、最終付与(Final grant)される。
当初付与(Initial grant)は、毎年されることが多い。
当初付与された株数と最終付与された株数は同じ場合もあるが、制限期間中の成績が加味されるため、必ずしも付与された株数と同じ株数が最終付与されるとは限らない。
制限期間中の業績を加味させることにより、役員・使用人のモチベーションを高めることができるので、インセンティブとしての効果がRSやRSUと比べて大きいといえる。
6. Phantom Stock(ファントム・ストック)、Deemed Stock
仮想株式(ファントム・ストック)を従業員に付与し、一定期間経過後、仮想株式の価値相当額を現金で支払う制度。
仮想株式の価値として、自社株の時価純資産価値、理論株価等がある。
仮想株式には議決権はないが、配当相当額が支払われる。
課税関係
価値相当額、配当相当額が支払われた時点の給与所得として確定申告。
外国親会社等からストック・オプション等の経済的利益が供与等されると、「外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書」が、毎年3月末までに税務署に提出されます。
税務署では、この調書と申告内容を照合し、疑義があるときは納税者に問い合わせがなされます。