家事事件

法律相談

私は、「留学」の在留資格で来日中の中国人です。窃盗罪で逮捕され、今なお勾留されているのですが、間もなく在留期間を経過してしまいます。オーバーステイにはなりたくないのですが、在留期間は更新してもらえるのでしょうか。
同時に逮捕された、「定住者」の在留資格を有する友人の場合と違いはあるのでしょうか。
また、起訴後に保釈は認められますか。

 

「留学」の在留資格での更新は困難ですが、「定住者」については事情により更新の可能性もあります。
保釈については、許可される可能性があります。

1在留期間の更新

逮捕勾留中に在留期間を過ぎてしまえば、適法な在留資格を失い、オーバーステイ(超過滞在)になります。この場合、刑事事件の処分結果にもかかわらず、出入国在留管理局に収容されて、退去強制となる危険が生じてしまいます(入管法24条4号ロ)。

そこで、在留期間の更新(同法21条1項)を求めていくことになりますが、
その要件は、
①更新許可申請時、更新を受けるのと同じ在留資格を有すること、
②当該在留資格の該当性が認められること、
③期間更新の相当性が認められること、
の3点です。

本事例で問題となるのは③ですが、この相当性の判断は法務大臣の広範な自由裁量に服するとされています。

そして実務上は、在留資格の種類によって処遇が異なってきます。

本事例のように、窃盗罪によって懲役又は禁錮に処せられた場合、「留学」(同法別表第1の4)の在留資格であれば、退去強制事由に該当してしまいます(同法24条4号の2。なお同条4号リと異なり、第4号の2の「懲役又
は禁錮に処せられたもの」とは刑の執行猶予の言渡しを受けた場合を含みます)。

したがって、在留期間の更新も困難です。

「定住者」(入管法別表第2)の在留資格を有する場合、上記の退去強制事由にはあたりませんが、更新の際の不利益事情になることは避けられません。

2更新の手続

それでも更新を求めていく場合、出頭の問題が生じます。在留期間の更新は本人出頭が原則ですが(入管法61条の9の3第1項3号)、本事例のように本人が勾留されている場合、本人出頭は不可能です。

そこで、弁護士や行政書士、親族等によって代理若しくは取次ぎ申請を行うことになります(入管規則59条の6第3項1号・2号)。

申請の提出先は、当該在留資格を管轄する正規在留部門です。おおむね2週間前後で処分がされた旨の通知のはがきが送付されます。

許可処分の場合には、そのはがきと在留カードを持っていき、新たな在留カードの交付を受けることになります(中長期在留者以外の場合には旅券(パスポート〉に在留期間更新のシールが貼られることになります)。

なお、在留期間内に申請に対する処分がされない場合、当該処分がされる日又は在留期間満了の日から2か月を経過する日のいずれか早い日までの間は、引き続き従前の在留資格をもって在留することができます。

しかしこれを超えると、オーバーステイとなりますので(入管法20条5項、21条4項)、注意が必要です。

3不起訴に向けて

「留学」の在留資格を有する者が、刑法犯罪等により、懲役又は禁錮に処せられれば、執行猶予が付されたとしても、退去強制事由に該当してしまいますし(入管法24条4号の2)、学校を退学させられるおそれもあります。

退去強制手続が執られるよう起訴に踏み切るような場合もあると指摘されています。
しかし一方、正式起訴に至らず、例えば、略式起訴されて罰金刑で済んだ場合、退去強制事由にはあたらず、退学も回避できる可能性があります。

したがって、不起訴又は略式起訴となるように努力したいところです。

4保釈について

保釈とは、起訴された後に住居限定や保証金を条件に、身体拘束を解く制度です。

法が定める場合を除いて許可される必要的保釈(刑訴法89条)と、裁判所の職権で許可される職権保釈(同法90条)とがあります。

前者は、重大犯罪・罪証隠滅・証人威迫・住居不定などの諸条件にあたらない場合に、被告人や弁護人の請求があれば認められなければならない保釈で、
後者はこれらの条件に該当する場合でも、裁判所の裁量で許可される保釈です。

外国人留学生の場合、逮捕勾留によって寄宿舎などの退去を余儀なくされる場合もありますが、住居不定となるのを避けるため、退去を待ってもらうように交渉したり、新たな帰住先を確保したりするなどの活動が必要です。

また、在留資格がなく、退去強制事由がある外国人は、日本国内に住所を有することができないとして、類型的に「住居不定」とする裁判官に遭遇する可能性もあります。

しかし、寄宿舎などの住居がある場合に、住居不定でないことは明らかであり、仮放免の許否を住居不定の要件判断に盛り込むべきではないことを説得的に主張すべきです【東京地決昭和51・12・2判時837号112頁】。

近年は保釈される比率が高まっていますが、後者の職権保釈によることが多いのが実情です。保釈中の監督体制について、裁判所を具体的に説得する必要があります。

なお、在留資格がない場合や、退去強制事由に該当する売春関係などの場合(入管法24条4号ヌ)、保釈許可によって身体拘束が解かれた時点で入国管理局に収容され、入管法上の退去強制手続が進行してしまいます。

そこで、真の身体解放のためには、出入国在留管理局に対して仮放免の申請(同法54条1項)を行う必要があります。

また、仮放免許可に際しては、保証金納付が別途必要なので注意が必要です。