家事事件

法律相談

私は在留資格がないまま日本に滞在していますが、この度、本国で軍事クーデターが起こったため、軍部に反対していた私は帰国できなくなりました。日本で難民申請したいと思いますが、在留資格がなくても大丈夫でしょうか。

在留資格がない外国人が難民認定申請を行った場合、法の定める除外要件に該当しなければ、仮滞在の許可を受けることができます。仮滞在の許可がない場合、退去強制手続は進行することになりますが、手続中(審査請求手続を含む)に送還することは法律により禁止されています。

1難民認定申請中(審査請求手続を含む)の在留資格

(1)申請時点で在留資格がある場合

申請時点で在留資格を有している場合、従前は特定活動(期間6か月)への在留資格変更が認められ、難民認定申請中(審査請求手続を含む)は、特定活動の在留資格の期間更新が認められてきました。

また、難民認定申請後6か月を経過した場合には、就労可能な資格外活動の許可がされていました。

しかしながら、法務省出入国在留管理局は、2018年1月12日、「難民認定制度の適正化のための更なる運用の見直しについて」を発表し、こうした実務に変更を加えました。

具体的には、難民申請受付後に案件の振り分けを行い、初回申請の場合、①難民該当性や本国情勢等により人道配慮の必要性が高い申請者については、速やかに就労可能な特定活動を許可する一方で、②難民該当性上の迫害事由に明らかに該当しない事情を申し立てる申請者については特定活動の付与や更新を認めず、③失踪した技能実習生や退学した留学生等本来の在留資格に該当する活動を行わなくなった後や出国準備期間中に難民認定申請をした申請者については就労を許可せず、在留期間を3か月とするとしました。

また、再申請の場合には、難民該当性や本国情勢等により人道配慮の必要性が高いとされる場合を除き、原則として在留資格の付与や更新を認めないということになりました。これによって、在留資格又は就労許可を失う申請者が増加しています。

今後もこの点についての運用の変更や法令の改正の可能性がありますので、注視することが必要です。

また、申請時点で「短期滞在」以外の在留資格を有している場合、難民認定申請を行ったことは在留資格に影響を与えません。

(2)申請時点で在留資格がない場合

①仮滞在許可

難民申請者が在留資格を有しない場合、入管法61条の2の4は、一定の除外要件に該当しない限り、仮滞在を許可するとしています。

しかしながら、除外要件は非常に幅広く、実際には仮滞在許可が認められない例も多く存在します。

また、仮滞在が許可されても、就労は許可されません。

なお、在留資格を有さない外国人が難民認定申請を行った場合、自動的に仮滞在についての判断もなされるので、別途仮滞在許可の申請を行う必要はありません。

仮滞在許可を受けた者については、収容を含む退去強制手続が停止されます(同法61条の2の6第2項)。

②仮滞在が許可されなかった場合

在留資格を有しない難民認定申請者について仮滞在が許可されなかった場合には、退去強制手続は停止しませんが、送還の効力は停止されます(同法61条の2の6第3項)。

したがって、難民認定申請中(審査請求手続を含む)に送還される危険はありません。ただし、審査請求が棄却されれば、送遠の現実的危険が生じることになります。

仮滞在が許可されなかった難民認定申請者が、収容令書又は退去強制令書により収容されている場合の解放の手段としては、仮放免許可申請や収容令書若しくは退去強制令書の執行停止申立等があります。

(3)空港での申請と在留資格

空港等での上陸審査手続において庇護を求める意思表示をした場合、法文上は一次庇護上陸の許可(入管法18条の2第3項)という制度がありますが、これまで許可された事例はほとんどないのが実情です。

上陸時に難民申請をした場合、仮滞在が許可される可能性もあります。仮滞在が許可されない場合には、そのまま退去強制手続に移行していくことになります。

2在留資格を有しない難民認定申請者と生活保障

在留資格を有しない難民認定申請者(仮滞在許可者を含む)や就労が認められない在留資格を有し、かつ資格外活動の許可を受けていない申請者の場合、就労によって生活を維持することができません。

他方、在留資格を有しない難民認定申請者は、生活保護や健康保険等の社会福祉を受けることもできません。

ただし、仮滞在許可者については、在留カードの対象外ではあるものの、住民登録ができ、生活保護の受給や国民健康保険への加入ができます。

現在、財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部(RHQ)が外務省の委託を受けて行う保護措置制度が存在しますが、①審査に時間を要すること、②給付内容が生活保護水準を下回っていること、③予算が限定されており、近年の難民認定申請者の増加に対応できていないこと、④訴訟段階の者には適用されないこと(ただし、1回目の難民不認定処分取消請求訴訟を提起している者が、2回目の難民認定申請をしている場合には、当該訴訟中に適用されるようです)、などの問題点が存在します。

3法律扶助について

難民認定申請の行政段階に関する法律援助については、在留資格の有無を問わず、日本弁護士連合会の法テラス委託援助事業による扶助を受けることができます。難民不認定処分取消請求訴訟などの訴訟手続に関する法律扶助については、在留資格がある場合は法テラスの民事法律扶助を、在留資格がない場合には行政段階と同様、委託事業による扶助を受けることができます。