家事事件

法律相談

私は超過滞在のまま郊外の工場で働いていた外国人です。工場で乱闘事件が発生し、たまたま居合わせた私も暴行を受けて骨折しました。被害届を出すと超過滞在で検挙されることが予想されますが、かといって泣き寝入りは納得できません。どうすればよいでしょうか。

 

被害届を出した場合、出入国在留管理局に収容されるリスクを十分理解する必要があります。弁護士による援助が必要であれば日弁連の委託法律援助制度を利用して弁護士に依頼することが可能です。

1収容の可能性

本事例で相談者は傷害の被害者ではありますが、超過滞在にもなっており、それぞれ別々の事件として取り扱われます。告訴状なり被害届を提出するなどして、暴行被害の申告をする際には、捜査機関より、国籍・住居・在留資格を必ず聞かれます。

そのため、超過滞在であることが判明し、逮捕されたり、出入国在留管理局に収容されたりする可能性があります。

ただし、在留特別許可が見込まれるような場合には、必ず収容されるわけではありません。摘発前に自ら出頭することが肝要です。

法務省出入国在留管理局の「在留特別許可に係るガイドライン」においても、自ら出頭することが在留特別許可の判断において、積極要素となることが記載されています。

本事例では被害者である以上、その被害申告によって逮捕に至るような事態は、実質的に被害申告を思いとどまらせることになり、かえって犯罪を助長するものにほかならず、不当ではありますが、現行制度上、なかなか有効な手立てがないのが現状です。

2人身取引の被害者の場合

犯罪被害者の中でも、「人身取引の被害者」であるとして、保護された場合には、法務大臣若しくは地方出入国在留管理局長の裁決の特例によって、在留特別許可が得られているようです(入管法50条1項3号)。

ただし、この場合も、結論が出るまでの間、収容される可能性もあります。

3弁護士への依頼など

最終手段としては、自主帰国の意思を示して出入国在留管理局に出頭の上、刑事での被害申告をしつつ、民事でも各種証拠保全を行い、帰国後も日本の弁護士と連絡を取り合って、被害回復を図ることが考えられます。

被害届を提出したり、告訴状を提出したりするなどのほか、刑事裁判では、法廷で被害者としての被害に関する心情その他の意見を述べることができます(刑訴法292条の2第1項)し、被害者参加制度(同法316条の33以下)もあります。

被害者救済のための活動は、在留資格がない外国人の場合であっても、日弁連の委託法律援助制度を利用して、弁護士に依頼することができます。

この場合の弁護士は、被害届提出、告訴・告発、事情聴取同行、検察審査会申立、法廷傍聴同行、証人尋問・意見陳述援助、刑事訴訟記録閲覧謄写、加害者側との対話、刑事手続における和解の交渉、犯罪被害者等給付金申請、報道機関等の対応・折衝など多岐にわたって活動することになります。