法律相談
私(外国人)は「短期滞在」の在留資格で滞在し、食品会社のお弁当製造工場で働いていました。在留期間が切れてもそのまま就労を続けていたところ、同社から不法就労を理由に解雇されてしまいました。
日本の労働法規の適用に従って解雇の有効性が判断されます。紛争解決するまでの在留をどうするかについても、留意する必要があります。
1不法就労者に対する労働法規の適用
そもそも不法就労者(就労資格を有しない在留資格の外国人)であっても、使用者と労働者との間に労働契約が有効に成立している場合、それが在留資格との関係において不法就労であるか否かは、労働契約の効力に影響を与えません。
また、労基法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などの労働保護法は、すべての労働者に適用されることから、不法就労者であっても、これら法律で定義する労働者にあたれば、原則として適用があると解されています。
さらに、昭和63・1・26基発50号、職発31号においても、職業安定法、労働者派遣法、労基法などの労働法規は、日本国内における労働であれば、不法就労者にも適用があるとしています。
加えて、労基法3条では、労働者の国籍を理由とする賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的な取扱いを禁止しています。
以上によれば、不法就労者との間の労働契約も有効であること、不法就労者に対しても日本の労働法規が原則として適用されることから、解雇権濫用の法理(労働契約法16条)に照らして、解雇の有効性が判断されることになります。
2入管法違反との関係
(1)在留資格を偽るなどしていた場合
在留資格を偽るなどして雇用され、経歴詐称が発覚したため解雇された場合、解雇権濫用の法理に従っても客観的に合理性があり、かつ社会的に相当との判断がなされる可能性があります。
経歴を偽った点のみならず、入管法により使用者に3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金が科される又はこれらが併科される(入管法73条の2第1項1号)可能性があるため、使用者が労働者を解雇することに合理性相当性があると考えられるからです。
ただし、このような不法就労が発覚した場合でも、解雇の手続に従わなければならないことから、本来であれば使用者は30日前に予告するか、それに変えて予告手当を支払うかしなければなりません(労基法20条1項)。
しかし、「労働者の責に帰すべき事由」に基づく解雇として、解雇予告手当は不要になると考えられます(労基法20条1項但書、3項「除外認定」)。
(2)使用者が不法就労を把握していた場合
使用者が不法就労を把握しながら、本事例のように解雇した場合も同様に、解雇権濫用の法理に従って有効性が判断されることになりますが、一律に有効無効をいうことはできず、個別の事案に即して、客観的合理性及び社会的相当の判断がなされることになると考えられます。
(3)関連する問題点
日本に在留したまま、裁判で争う場合、在留をどうするかが問題となります。
在留期間経過後も滞在を続けていたので、入管法24条により退去強制事由に該当し、退去強制手続が進められることになります。
ですから、退去強制手続の中で在留できる方途を探っていくことになります。
また裁判で争い、仮に解雇が無効と判断された場合、裁判所がどのように判断するかは難しいところです。
裁判所が労働者の地位確認判決を出した場合には、不法就労を助長する結果になりかねません。
そこで学説上、裁判所は地位確認を認めず、賃金支払については判決時までの部分の支払いは可能だが、将来分については損害賠償(金銭補償)による解決のみ可能とするものがあります。