在留管理制度

一般に日本国の領土に上がるという意味での「入国」は、入管法上、「上陸」と定義されています。上陸の目的や期間によって、上陸に必要な手続は異なります。出国については自発的に出国するかどうかによって手続が異なります。

1外国人の入国(上陸)手続について

(1)上陸の要件

外国人が日本に入国し、上陸するためには、原則として次の要件すべてに適合している必要があります。
なお、「入国」とは、領海又は領空に入ること、「上陸」とは領土内に足を踏み入れることをいい、両者を区別して理解する必要があります。

①有効な旅券

まず、有効な「旅券」(パスポート)を所持していることが必要です(入管法6条1項、7条1項1号)。
有効期限を経過している旅券を所持していても、この要件を充足しないため、日本に上陸を検討している外国人は、まず、自国で有効期間のある旅券を取得する必要があります。

②査証(ビザ)

次に、旅券に日本国領事官等からの有効な「査証」(ビザ)を受けていることが必要です(同法6条1項、7条1項1号)。
査証とは、外国にある日本大使館又は総領事館において発給するいわば推薦状であり、実際には旅券に証印を押してもらうことにより確認されます。査証は外務省の所管とされます(外務省設置法4条1項13号)。

短期滞在の査証免除の場合

例外的に、短期滞在目的の場合、日本と外国との間で互いに査証免除協定が締結されていると、査証を受ける必要がありません(入管法6条1項ただし書)。

そこで、外国人が日本への上陸を検討する際には、自国が日本との査証免除の対象になっているかを確認する必要があります。

長期滞在目的の場合

これに対し、長期滞在目的の場合には、査証免除が認められておらず、査証が発給されるかどうかの判断手続も厳格になる(すなわち、在外日本大使館から日本の外務省を経由し法務省出入国在留管理局にて審査される)ことがあり、査証の取得まで時間がかかることになります。

そこで、このような長期滞在目的の場合には、在留資格認定証明書を利用する方法が一般的です。

③その他

前記のほかに、

・申請に係る在留活動が虚偽のものではなく、かつ、在留資格付与の要件に関する入管法別表第1・第2、同規則等所定の基準に適合すること(入管法7条1項2号)、
・申請に係る在留期間が入管規則の規定に適合すること(同条項3号)、
・上陸拒否事由に該当しないこと(同条項4号)

が必要です。

(2)上陸許可等

一部例外を除き、各要件をすべて満たした場合、上陸許可が出され、上陸することができます。

もっとも、例外的に、前記の要件を欠いていた場合でも、上陸許可がされる場合や上陸許可がなくとも上陸できる場合があります(入管法12条~18の2)。

(3)上陸審査

日本に到着した外国人は、入国審査官に対し上陸申請をして、上陸審査手続を経ることが必要です(入管法6条2項)。

すなわち、上陸審査において、前記上陸許可の要件充足の有無が審査され、旅券に上陸許可の証印を受けることによって、はじめて合法的に上陸することができるとされており、これを受けない外国人は、退去強制及び刑事罰の対象となります。

まず、上陸申請に必要な外国人入国記録又は再入国記録に記入します。これらの出入国記録カードは、一般的に、EDカード(Embarkation and Disem-barkation Card)と呼ばれています。このEDカードの「渡航目的」及び「日本滞在予定期間」の欄や、過去の退去強制歴の有無等の質問は、特に正確に記入する必要があります。

上陸審査は、日本到着後、船舶の場合は原則として船舶内、航空機の場合は空港内の上陸審査場で行われます。

入国審査官は、提出されたEDカードを参照しつつ、旅券と査証を点検しますが、場合によっては、申請に虚偽がないことを裏付ける資料の提出を求め、上陸目的と滞在予定期間について質問します。

長期滞在希望などで、在留資格認定証明書の発給を受けている人は、これを提出することで審査は簡単に済みます。

このようにして、上陸要件に適合するかどうかが審査され、上陸が許可されるかどうかが決定されます。

これら上陸審査の際には、テロの未然防止を目的とし、原則として、指紋及び顔写真を提供する必要があり、これを拒むと入国が許可されないとされています(同法6条3項)。

上陸が許可されるときは、旅券にシール式の上陸許可の証印が押されます。この証印には、上陸許可年月日、在留資格、在留期間、上陸港名等が記載されます。上陸要件に適合しないとして上陸の許可を受けられない外国人は、口頭審理を受けることとなります。

2外国人の出国手続について

出国に際しては、出国審査手続により、入国審査官から出国の確認を受けなければなりません(入管法25条)。

この目的は、滞在していた外国人の所在を確認することにあります。以下、在留期間内の出国かどうかに分けて説明します。

(1)在留期間内の出国再入国

出国の際には、「再入国出入国記録」に、氏名、生年月日、便名を記入し、再入国の予定の有無や予定出国期間については該当する欄にチェックをします。

みなし再入国許可の適用を受けて再入国する予定の場合には、再入国の予定である旨の欄に忘れずにチェックをする必要があります。

現在、中長期在留者で在留カードを交付されているが、再入国の予定はないという場合には、在留カードを返納します。

これに対し、再入国許可(みなし再入国許可を含む)、又は法務大臣が交付した難民旅行証明書により出国する場合は、在留カードを入国審査官に返納せず、海外に持参することになります。

(2)在留期間経過後の出国

これに対し、在留期間を過ぎている場合には、出国確認時に著しく手間がかかるため、在留期間を過ぎていないかどうかに注意し、万が一、出国までに在留期間が過ぎてしまう場合には、在留期間内に地方出入国在留管理局支局・出張所で在留期間更新の許可を受けておくことが必要です。

在留期間が過ぎてしまったときには、退去強制の手続によることになります。

(3)その他の場合

このほかに、出国確認の留保という制度もあります。

これは、関係機関から当該外国人が死刑若しくは無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪によって訴追されている場合、又はこれらの罪を犯している疑いにより逮捕状、勾引状、勾留状若しくは鑑定留置状が発せられているなど、一定の事由に該当する者である旨の通知を受けているときは、出国の確認の手続がされた時から24時間に限り、その者の出国の確認を留保することができるというものです(入管法25条の2)。

したがって、該当する外国人は、このような場合、24時間は出国ができないことになります。