法律相談
私(外国人)は、英会話学校の講師をしています(在留資格「技術・人文知識・国際業務」)。雇用契約期間は1年ですが、これまで6回更新されていました。しかし、今回突然、「契約を更新しないので、来月から来なくていい」といわれました。このようなことが許されるのでしょうか。
合理的理由がなければ許されません。
1「雇止め」とは
本事例のような、いわば期間を定めた労働契約の期間満了に際し、使用者が契約の更新拒絶をすることは「雇止め」と呼ばれています。
期間の定めのある場合に、当然に契約が終了することをとらえ、継続して雇用したいときは「契約更新」、不要になったら「雇止め」というようなケースが見られるようになっています。
とりわけ「雇止め」は、日本人のみならず、外国人の場合も問題となっており、景気悪化の際の調整弁として、外国人が容易に「雇止め」の対象とされるケースが増えています。
2有期雇用契約の期間
労働契約の期間を定める場合、その期間は原則として3年(例外として法定されているもので5年)を超えてはならないと定められています(労基法14条)。
期間を定めた労働契約は、民法の原則に従えば期間が満了すれば終了します。
例えば、臨時的・季節的な労働内容で、このことを前提に労働契約に期間を定めた場合には、労働契約は終了するということです。
3年を超えた期間を定めて契約しても、労基法13条、14条により前記の期間(3年又は5年)を定めたものとされ、これを超えて労働関係が継続された場合には、黙示の更新により期間の定めのない契約として継続すると解されています。
したがって、3年(又は5年)を経過した後に労働契約を終了することは、法的には解雇と解されます。
そのため、理由のない解雇には、解雇権濫用の法理(労働契約法16条)が直接適用されることとなります。
3雇止めに対する制限
それでは、3年以内の期間を定めて期間満了ごとに労働契約の更新を繰り返してきたような場合はどうでしょうか。
契約期間を反復更新していた場合の雇止めが許されるかにつき、従前、判例上、いわゆる雇止め法理が確立していましたが【最判昭和49・7・22民集28巻5号927頁、最判昭和61・12・4労判486号6頁、最判平成21・12・18民集63巻10号2754頁など】、2012年の労働契約法改正により、明文化されるに至りました(同法19条)。
同条は、
(ア)労働者が期間満了前に更新の申込みをしたか、又は、期間満了後遅滞なく契約締結の申込みをしたが、使用者がその申込みを拒絶したものの(柱書)、
(イ)①有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められる(同条1号)か、
②当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる(2号)場合に、
(ウ)雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき(柱書)は、労働者からの上記更新契約締結の申込みを、使用者が従前の有期契約と同一条件で承諾したものとみなす、
と規定しています。
本事例では、期間満了による当然の終了ではなく、労働契約法19条により、その雇止めの有効性が判断されることになるでしょう。
なお、前記2012年の労働契約法改正では、有期労働契約が少なくとも1回以上更新され、通算の契約期間が5年を超えた場合に、労働者による無期労働契約締結の申込みと使用者のみなし承諾により、無期労働契約への転換を認める規定が新設されました(同法18条)。
したがって、本事例でも、同条の要件を満たす場合には、無期労働契約への転換を主張することが考えられます。
4契約締結時の更新の基準の明示
使用者は、有期労働契約の締結に際し、契約を更新する場合の基準を書面で明示して労働者に交付しなければなりません(労基法15条1項、労基規則5条1項1号の2、2~4項)。
加えて、労基法14条2項に基づいて厚生労働大臣が定める「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」では、契約が3回以上更新され、あるいは、1年を超えて継続雇用している場合には、期間満了30日前までに雇止めの予告をしなければならず(同基準1条)、労働者からの求めがあった場合に、更新しない理由について証明書を発行しなければならないとされています(同基準2条)。
また、契約が1回以上更新され、かつ、1年を超えて継続雇用している場合には、契約の実態及び労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならないとされています(同基準3条)。
5関連する問題点
前記のような「雇止め」の効力について、裁判による解決を求める場合、在留期間との関係が問題となります。
相手方となる会社が争う場合などは、長期化が避けられません。その際、在留資格の更新が問題となってきます。
しかし、本事例のような場合、就労状態にないことから、従来の在留資格のまま在留期間の更新を申請しても認められない可能性があります。
その場合には、裁判で争っていることがわかる疎明資料(訴状等)を提出して、出入国在留管理局に対して、「特定活動」へ変更することが考えられます。
また、その上で長期化する場合には、「短期滞在」の更新申請で対処していくことになるでしょう。
したがって、本事例のような場合、労働法規上の問題のみならず、在留資格の点についても併せて考える必要があります。