外国人学校を卒業した子どもが、日本の大学や高校に進学する場合についてご説明します。
法律相談
私の子どもは、外国人学校に通い、現在、日本の中学に相当するレベルの勉強をしています。子どもは、将来、日本の大学への進学を希望しており、そのために公立高校に進学することを検討していますが、外国人学校から日本の高校や大学へ進学することはできるのでしょうか。
大学については、文部科学省の指定を受けた学校や、国際的な評価団体の認定を受けた学校を卒業した場合、大学において個別の入学資格審査により認められた場合などには入学資格が認められます。
高校に進学する場合については、外国人学校で中学に相当する課程を修了することで、高校の受験資格が認められる場合があります。
1大学進学について
学校教育法90条1項は、大学の入学資格を、「高等学校若しくは中等教育学校を卒業した者若しくは通常の課程による12年の学校教育を修了した者(通常の課程以外の課程によりこれに相当する学校教育を修了した者を含む。)又は文部科学大臣の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者」と定めています。
外国人学校は、学校教育法1条の「学校」とは認められておらず、法律上は、各種学校又は未認可の私塾という位置付けであるため、日本国内にある外国人学校で、高等学校に相当するレベルの課程の勉強を終えても、法律上は、高等学校や中等教育学校を卒業したものとは扱われません。
そこで、外国人学校を卒業した生徒については、大学の入学資格を得るためには、どうすればよいのかが問題になります。
まず、文部科学省から、外国の高等学校相当として指定を受けた外国人学校を卒業した場合は、高校卒業と同等以上の学力があると認められ、大学入学資格を得ることができます。
ただし、その学校の課程が12年未満の課程の場合には、原則として、さらに指定された準備教育課程、又は研修施設の課程等を修了する必要があります(学校教育法規則150条1号、昭和56年文部省告示153号4号・5号)。
指定を受けている学校には、欧米系、アジア系、南米系など各国の民族学校がありますが、文部科学省は、日本に数多くある朝鮮学校に対しては、この指定をしていません。
また、WASC、CIS,ACSIといった国際的な評価団体の認定を受けた外国人学校の12年の課程を修了した者についても、大学入学資格が認められます(学校教育法規則150条4号、昭和23年文部省告示47号・24号)。この認定を受けている学校は、いずれも、英語で教育を行う、いわゆるインターナショナルスクールです。
どの学校が、文部科学省の指定又は国際的な評価団体の認定を受けているかについては、文部科学省のホームページ(http://www.mext.go.jp/)などで調べることができます。
さらに、文部科学省の指定も、国際的な評価団体の認定も受けていない外国人学校を卒業した場合であっても、18歳以上で、入学しようとする大学の個別の入学資格審査により、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められた場合には、大学入学資格が認められます(学校教育法規則150条7号)。
朝鮮学校の卒業生は、この規定に基づいて大学に進学しているのが現状です。
これらの規定のいずれによっても、大学入学資格が認められない場合には、高等学校卒業程度認定試験(旧大検)に合格する必要があります(学校教育法規則150条5号)。
2高校進学について
高校進学についても、大学の場合と同様、外国人学校で中学に相当する課程を修了しても、法律上、中学卒業の資格が得られないことから、高校の入学資格が得られるかが問題になります。
法律上、高等学校の入学資格があるのは、中学校若しくはこれに準ずる学校、若しくは義務教育学校を卒業した者、若しくは中等教育学校の前期課程を修了した者、又は文部科学大臣の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者」(学校教育法57条)と定められています。
外国人学校を卒業した生徒については、同条後段及び学校教育法施行規則95条によって、中学校卒業者と同等以上の学力があると認められる必要があります。
具体的に、どのような場合にこれが認められるかですが、
まず、卒業した外国人学校の課程やそこでの成績によっては、同施行規則95条5号に該当するとして、受験資格が認められる余地があります。
ただし、外国人学校に在籍する生徒に受験資格を認めるか、認める場合にどのような要件を課すのかは、各高校の判断となるので、地域や学校によって取扱いの違いが生じる可能性があります。
また、外国にルーツを持つ子どもなど、日本国籍の子どもが外国人学校に在学している場合には、法律上、就学義務が免除されていないことから、外国籍の子どもについて外国人学校からの公立高校進学を認めている高校や地域であっても、その日本国籍の子どもに入学資格が認められない可能性があります。
外国にルーツを持つ子どもが、自らのアイデンティティに誇りを持ち、継承語を学ぶ機会を持つことの意味を考えると、このような取扱いの正当性は疑問ですが、実際に子どもや保護者の相談を受ける際には、注意する必要があります。
このほか、就学義務猶予免除者等を対象として、文部科学省が「中学校卒業程度認定試験」を行っており、これに合格すれば、中学校卒業と同等以上の学力があると認められ、高校の入学資格を得ることができます(学校教育法規則95条4号)。
中学校卒業程度認定試験は、近年は、出願が8月下旬から9月初めにかけて、試験が10月末頃、合格発表が12月初め頃というスケジュールで行われています。
いずれにせよ、外国人学校に在籍する子どもが日本の高校に進学したいという場合は、早めに志望校や教育委員会などと相談して、受験資格を確かめ、対策を考えておく必要があるでしょう。