日常生活1

日本国内での勤務に対する給料は、国内源泉所得として日本で税金を支払う必要があり、源泉徴収されるのが原則です。

法律相談

私は、X国の国籍を有しており、X国のY社に所属していますが、Y社から派遣され、5か月間、日本の事業所で勤務することになりました。この間Y社から受ける給料について、日本で税金を支払う必要はあるのでしょうか。

 

日本国内での勤務に対する給料は、国内源泉所得として日本で税金を支払う必要があり、源泉徴収されるのが原則です。

1所得税法における納税義務者区分

(1)所得税法における区分

日本の所得税法(2条1項3号~5号)は、個人を「居住者」と「非居住者」に区分し、さらに居住者について「永住者」と「非永住者」に区分して、それぞれ異なる課税範囲と課税方法を定めています。

そこで、まずは、納税義務者区分のいずれに該当するのかを確認する必要があります。

「居住者」とは、
国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいいます。

「住所」とは、
各人の生活の本拠をいいます。

「居所」とは、
その人の生活の本拠という程度には至らないまでも、その人が現実に居住している場所をいいます。

「非永住者」とは、
居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において、国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいいます。

「永住者」とは、
非永住者以外の居住者をいいます。

「非居住者」とは、
居住者以外の個人をいいます。

(2)住所を有しないことの推定

所得税法施行令15条は、次のような場合に、国内に住所を有しない者と推定する規定を置いています。

①その者が国外において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有すること

②その者が外国の国籍を有し、又は外国の法令によりその外国に永住する許可を受けており、かつ、その者が国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有しないこと、その他国内におけるその者の職業及び資産の有無等の状況に照らし、その者が再び国内に帰り、主として国内に居住するものと推測するに足りる事実がないこと

③上記①②の規定により、国内に住所を有しない者と推定される個人と生計を一にする配偶者、その他その者の扶養する親族が国外に居住する場合

(3)本事例の相談者

本事例の相談者は、X国のY社に所属しており、日本での勤務期間が予め5か月と決まっていることなどから、特別の事情がなければ、日本国内に住所がないと推定され、非居住者に該当すると考えられます。

2課税範囲

(1)国内源泉所得

非居住者は、国内源泉所得についてのみ課税されます(所得税法5条2項、7条1項3号)。どのような所得が国内源泉所得にあたるかは、所得税法161条に規定されています。

(2)国内勤務に基因する給与等

所得税法161条12号イでは、「俸給、給料、賃金、歳費、賞与又はこれらの性質を有する給与その他人的役務の提供に対する報酬のうち、国内において行う勤務その他の人的役務の提供(内国法人の役員として国外において行う勤務その他の政令で定める人的役務の提供を含む。)に基因するもの」は国内源泉所得にあたるとされています。

(3)本事例の相談者

本事例の相談者がY社から受け取る給与は、国内勤務に基因する給与として国内源泉所得にあたりますから、課税の対象になります。

3課税方法

(1)非居住者の所得税の納税方法

所得税の納税方法は、居住者、非居住者の居住形態によって区別されています。

非居住者の納税方法は、所得税法164条に規定されており、いわゆる恒久的施設(事業を行う一定の場所や代理人など)の有無や国内源泉所得の種類によって異なります。

(2)本事例の相談者

本事例の相談者は、国内に恒久的施設を有しておらず、Y社から受け取る給与は源泉分離課税の対象となります。

相談者の納税はY社による源泉徴収によって終了するのが原則で、この場合には確定申告をする必要はありません(所得税法169条、212条)。税率は20.42%とされています(170条)。

4租税条約

なお、本国と日本との間で租税条約等が締結されている場合は、当該租税条約等が優先的に適用されます。

例えば、日米租税条約では、一定の場合に、源泉地国(本事例では日本)での課税を免除する旨の規定があり、これによると、本事例のようなケースでは、日本で課税を受けない可能性があります。適用される租税条約等がないかどうか、確認する必要があります。