在留管理制度

事業をしたい外国人の在留資格についてご説明します。

法律相談

私(中国人)は、中国上海において従業員50人ほどの機械メーカーの社長をしていますが、今回日本の同業の従業員30人ほどの機械メーカーを買収して、長男及び次男をそれぞれ取締役及びエンジニアとして日本の会社に送り込みたいと考えています。いかなる在留資格を取得したらいいでしょうか。

入管法で就労可能とされている在留資格のうち、長男は「経営・管理」、次男は「企業内転勤」のための在留資格を取得することになります。

1「経営・管理」の在留資格取得

(1)申請人の資格

日本の会社を買収した上、買収者以外の者が買収者に代わって、当該会社の取締役に就任し、事業の経営をすることは、日本における貿易その他の事業の経営を行う活動(入管法別表第1の2)に該当し、「経営・管理」の在留資格を取得することができます。

申請人は、経営者としての「経営・管理」の在留資格を取得するために、基準省令に掲げる基準をすべて満たしている必要があります。

この基準として、

①当該事業を営むための事業所が日本に存在し(ただし、事業が開始されていない場合は、日本に事業所用施設が確保され)、

②当該事業がその経営に従事する者以外に2人以上の日本に居住する者(同法別表第1の上欄の在留資格を持って在留する者を除く)で常勤の職員が従事して営まれるか、又は資本金の額もしくは出資の総額が500万円以上の規模のものであること

が挙げられています。

もし申請人が事業の管理に従事するような場合は、事業の経営又は管理について3年以上の経験(大学院において経営・管理に係る科目を専攻した期間を含む)を有し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同額以上の報酬を受けることが要求されます(規準省令)。

なお、「経営・管理」の在留資格に該当する活動は、事業の経営や管理に実質的に参画すると判断される者をいいます。

具体的には、社長、取締役、監査役等や部長、工場長、支店長としての活動などがこれに該当することになりますが、活動の実態がそれにふさわしいものである必要があります。

(2)受入団体の資格

受入団体としての買収先の事業所は、日本に存在し、常勤の従業員を2人以上雇用しているか、資本金もしくは出資の総額が500万円以上である必要があります。

受入団体は、その事業が適正に行われており、かつ安定性及び継続性の認められるものでなければなりません。

ここにいう安定性及び継続性についての判断は、資本合計、営業損益のバランス、従業員数等から総合的に検討されます。

また、受入団体の事業所が賃貸物件の場合、賃貸借契約の中で、その使用目的を事業用若しくは店舗、事務所等事業目的であることを明示するものでなければなりません。

契約書中の賃借人についても、当該法人等の名義として、当該法人等による使用であることを明確にする必要があります。

なお、事業は継続的に運営されることが求められますから、3か月以内の短期間の賃貸スペース等を利用したり、容易に処分できる屋台等を利用したりする場合には、基準を満たすとはいえません。

なお、外国人投資家が新たに日本で事業を始める場合にも、この「経営・管理」の在留資格の対象となりますが、その場合は、事業計画(収支見積り等を含む)に具体性、合理性が認められ、かつ実現可能なものでなければなりません。

新規事業を開始しようとする場合は、

①事業所の確保、

②2人以上常勤で雇用する職員の給与、

③その他事務機器の購入経費や事務所維持に係る経費

について投資した額が500万円以上であり、かつ500万円以上の投資額が継続して維持されていることが必要です。

本事例では、長男は日本にある従業員30人ほどの買収先企業に取締役として、来日することを予定しており、この「経営・管理」の在留資格に該当するといえます。

2「企業内転勤」の在留資格取得

(1)申請人の資格

外国にある事業所の職員が、当該事業所の日本にある本支店、事業所に期間を定めて転勤し、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当する活動を行う場合には、「企業内転勤」の在留資格を取得することができます(入管法別表第1の2)。

申請人は、「企業内転勤」の在留資格を取得するために、基準省令に掲げる基準をすべて満たしている必要があります。

この基準としては、

①申請に係る転勤の直前に外国にある本店、支店その他の事業所において1年以上継続して「技術・人文知識・国際業務」に係る業務に従事していること、

②日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること、

が挙げられています。

この資格で在留する外国人の活動の内容は、「技術・人文知識・国際業務」にかかわる在留資格の活動と同じですが、他方、在留期間が限られていること、転勤先の事業所でしか活動できないこと、これら在留資格の両方の活動に従事できることという相違があります。

本事例では、申請人である次男が中国において、1年以上継続して、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で認められる業務に従事している必要があります。

ただし、日本で従事する「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で認められる活動との関連性までは問われません。

また、日本においての給与・報酬額が、日本人と同水準でなければなりません。

(2)受入団体の資格

企業内転勤の対象となる日本における事業所は、日本において本店を置く日本企業や外資系企業のみならず、外国企業や合弁企業の支店も含まれます。

ここにいう「転勤」は、同一会社内(本支店間)の異動のみならず、系列企業内(親会社、子会社、関連会社)の出向等も含みます。

ここにいう親会社、子会社は会社の意思決定について支配・被支配の関係にある会社を指します。

関連会社とは子会社以外の他の会社等の財務、営業、事業の方針決定に対して重要な影響を与える場合における会社等をいいます。

3手続

在留資格認定証明書の交付を受けるためには、出入国在留管理局ホームページにある所定の書類を地方出入国在留管理局に提出する必要があります(入管規則6条の2第1項・2項、別表第3、出入国在留管理局ホームページ。
所属先が上場企業等の場合は提出書類の簡略化が図られています。